2023年4月6日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター (NCNP)
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部 Ben Raveney 研究員 (部長:山村 隆) が、『第51回日本免疫学会学術集会』 (開催時期:2022年12月7日~9日、開催地:熊本) において、『ベストプレゼンテーション賞 』を受賞しました。
<受賞演題>
「NRP1は自己免疫疾患における病原性自己反応性ヘルパーT 細胞のマーカー分子である」
<研究概要>
多くの自己免疫疾患は、免疫細胞(ヘルパーT (Th) 細胞)が自分の組織を攻撃することにより生じます。現在の医療では、自分の組織を攻撃する自己反応性Th細胞と外来性の病原体から体を守ってくれるTh細胞の区別が困難です。もし自己反応性Th細胞のマーカーが同定されれば、自己反応性Th細胞の数や活性だけを調節できる理想的な治療が実現します。自己反応性Th細胞を識別できるマーカーの同定は研究者の夢でしたが、これまで明確な情報は得られていませんでした。
自己免疫疾患には全身性疾患(全身性エリテマトーデスSLEなど)と特定の臓器だけが冒される疾患(多発性硬化症MSなど)がありますが、私たちはSLEやMSのモデルマウスにおいて、Neuropilin-1 (NRP1)という分子の発現が特定のTh細胞(非制御性Foxp3- Th細胞; Foxp3- Th細胞)で増加することを見出しました。非自己ペプチドに対する免疫応答では、このNRP1陽性Th細胞の増加はみられませんが、自己免疫疾患を誘導する免疫応答にともなって、このNRP1陽性Th細胞が増加しました。したがってNRP1は自己免疫反応に関係し、NRP1+Foxp3- Th細胞は、自己反応性Th細胞の特徴を持つと考えられます。さらに、NRP1の発現量が病気の重症度を反映し、NRP1+Foxp3- Th細胞を正常マウスに移入すると自己免疫疾患の進行が加速することがわかりました。一方、NRP1発現細胞を標的とした治療を施したところ、病気の軽症化がみられました。これらの結果から、NRP1は自己反応性Th細胞の有用なマーカー分子であることが明らかになりました。
本研究は、自己免疫疾患の原因となる特定の細胞にだけ作用する新しい治療法の開発につながる可能性を示し、今後の発展がさらに期待されます。

写真左/Ben Raveney 研究員、写真右/山村 隆 部長
<リンク>
※外部リンク
第51回日本免疫学会学術集会
Best Presentation Award Winner 2022 https://www2.aeplan.co.jp/jsi2022/award/