2025年10月28日
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)微細構造研究部の一戸紀孝部長が、中国科学院を中心に発足した国際霊長類脳マッピング・コンソーシアム(ICPBM)の初代カウンシルメンバーに選出されました。
ICPBMは、霊長類(マーモセット・マカク・ヒト)の脳構造を細胞・回路・分子レベルで統合的に解析し、精神・神経疾患の理解と治療法開発に資する世界的な研究ネットワークです。このたび、世界24か国の研究機関が25年間にわたる協働を開始しました。一戸部長のコメント
「霊長類の脳を共通の言語で理解することで、ヒトの精神・神経疾患の根本に迫る研究が新しい段階に入ります。NCNPの霊長類研究が、その国際的な橋渡しの一端を担えることを誇りに思います。」
(写真提供:中国科学院 脳科学・知能技術卓越センター(ION/CAS))
2025年9月、上海で開催された「International Forum on Mesoscopic Brain Mapping」にて、International Consortium for Primate Brain Mapping(ICPBM)の発足を記念するサイニング・セレモニーの様子。各国代表が一斉にライトパネルに手を当て、国際協力の始動を象徴しました。
ICPBMとは
ICPBM(International Consortium for Primate Brain Mapping)は、中国科学院脳科学・知能技術卓越センター(ION/CAS)を中心に設立された非営利の国際学術コンソーシアムです。25年間にわたり、世界24か国・100名以上の研究者が協働し、霊長類の脳を分子・細胞・回路・行動レベルで統合的にマッピングすること(メゾスコピック・マッピング)を目的としています。
このメゾスコピック・マッピングの試みは、脳の構造的基盤を明らかにし、神経疾患の病態理解と新しい治療法の創出につながることが期待されます。
NCNPの霊長類研究の国際的意義
NCNPでは、独自に確立したマーモセットを用いた精神・神経疾患モデルを中心に、霊長類脳の層構造・接続構造・遺伝子発現構造を統合的に解析しています。
これまでに、下記を通じて、トランスレーショナル・リサーチの基盤を国際的に先導しています。ICPBMへの正式参加は、これらの研究基盤を活かし、ヒト脳研究との連携をさらに加速する重要なステップです。-ASDモデルマーモセットの神経・分子・行動レベルの包括的解析
-マーモセット全脳接続アトラス(BMA2.0)の構築
-皮質層構造の自動マッピング技術の開発
-人間の脳画像・遺伝子データとの比較解析
NCNPは、国内外の研究機関との連携を通じて、マーモセットを中心とした精神・神経疾患研究をさらに深化させ、ICPBMとの協働により、日本発の霊長類脳科学の世界的発信拠点を目指します。
参考
Science(Vol. 390, Issue 6768)「China launches ambitious international effort to map primate brains」<関連リンク>
>神経研究所
https://www.ncnp.go.jp/neuroscience/index.php
>微細構造研究部
https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r_mic/




