睡眠の可視化~良い睡眠とは~

睡眠の可視化~良い睡眠とは~

睡眠・覚醒障害研究部は、不眠症、過眠症、概日リズム睡眠・覚醒障害などの
様々な睡眠・覚醒機構に関わる疾患の病態解明、治療法開発とともに、
睡眠・覚醒機構の生理学的メカニズム、
睡眠中に生じる脳や身体の修復メカニズムの解明に取り組んでいます。

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精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部

睡眠の意義および
計測技術

脳波(PSG)で定義された一晩の睡眠状態の変化

 毎日の必要な睡眠時間はおおよそ6時間~10時間程度と考えられており、若い人はより長い睡眠時間が必要です。人生の1/3は眠っていると言っても過言ではありません。睡眠はほぼあらゆる恒温・脊椎動物に見られる休息活動であり、大脳の発達とともに出現しました。睡眠は脳を休め、働き通しで熱くなった脳の温度を下げるためにあると言えます。
 睡眠を客観的に計測する技術としては、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)が主に用いられており、20世後半に開発され、技術的に進化し続けています。PSGは脳波、眼球運動、筋電図、心電図、呼吸センサー等から構成され、近年は脳波の多極化や、体温計測の同時計測も導入されつつあります。これにより、脳や身体の休息状況、脳温の経時的変化も捉えられるようになってきました。さらに、近赤外分光法や磁気共鳴画像法などを加えて、脳の休息状況を多面的にとらえる試みも行われています。

眠りの休息効果

睡眠中の恐怖記憶の定着プロセス(徹夜をすることで恐怖記憶の定着を和らげることができる)

 睡眠中は脳の活動が低下します。脳波上で低振幅徐波と呼ばれる4Hz(毎秒4回)未満の緩やかな基礎律動が出現する時間帯が、最も深く脳が休息する睡眠
(深睡眠)と考えられています。睡眠初期の深睡眠中に成長ホルモンの分泌が高まり、身体組織の修復・改良が進みます。自律神経系の活動も副交感神経優位となり、血圧や心拍数が減少し肝臓ではエネルギーの貯蔵が行われます。
 しかし、深睡眠の出現量が必ずしも睡眠後の休息感(良く寝た感覚)に反映しないことが知られています。また、高齢者においては、深睡眠の出現量が心血管系疾患を中心とした全死亡へ及ぼす影響は、さほど大きくない事も分かってきています。深睡眠は加齢とともに出現量が減少するため、活動量の多い若年層にとってより重要な睡眠状態といえるかもしれません。

記憶を貯蔵し
頭を整理する
ための眠り

研究風景

 日中に学んだ事柄を脳に定着させるために、睡眠は重要な役割を果たします。単語学習などの知識を増やす学習を行った直後に徹夜をすると、翌日以降の記憶定着度が著しく低下します。スポーツや楽器演奏などの、動作に関わる記憶に関しても同様で、特に複雑な動作の学習になるほど睡眠は重要です。
 また、恐怖や驚き等の感情を伴う記憶においても同様のことが起こることがわかっています。このことから私たちは、ショッキングな出来事に遭遇した後遺症として生じる心的外傷後ストレス障害(PTSD)の予防に、徹夜により記憶の定着を低下させることの有効性を調査しています。
 知識学習の定着には深睡眠が重要であると考えられていますが、動作記憶には浅めのノンレム睡眠、感情を伴う記憶にはレム睡眠が重要と考えられています。私たちは、それぞれの睡眠状態下で、記憶定着に寄与する脳神経活動を調査しています。
 当研究部は、こうした活動を通してヒトが睡眠をとる意義について、今後も探求していきます。


リファレンス

1. Kuriyama K, Stickgold R, Walker MP. Sleep-dependent learning and motor-skill complexity. Learn Mem. 2004;11(6):705‐713.
2. Kuriyama K, Soshi T, Kim Y. Sleep deprivation facilitates extinction of implicit fear generalization and physiological response to fear. Biol Psychiatry. 2010;68(11):991‐998.
3. Kuriyama K, Honma M, Yoshiike T, Kim Y. Memory suppression trades prolonged fear and sleep-dependent fear plasticity for the avoidance of current fear. Sci Rep. 2013;3:2227.

研究部紹介

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