新しい実験動物をつくり新しい治療法をみつける

新しい実験動物をつくり新しい治療法をみつける

NCNP神経研究所は神経・筋・精神疾患や発達障害の基盤となる生物機能を解明することにより、
画期的な治療法開発に発展させることを目的とした研究所です。
モデル動物開発研究部では、ヒト疾患モデル動物の開発をしています。
ヒトと類縁種であるサルを用いることで
ヒトにも直接応用できる創薬や治療法を生む可能性があり、注目を集めています。

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神経研究所 モデル動物開発研究部

マーモセット
新たな
疾患モデル動物

研究者とマーモセット

 実験動物として用いられる霊長類には、マカクサルなどが一般的ですが、コモンマーモセットは霊長類の中では珍しく多産で、性成熟までの期間や妊娠期間、出産間隔が短いため、マカク類と比較して繁殖効率がよいこと、また、比較的小型(300-400g)であることから、橋渡し研究に必要な個体数を確保しやすいのが特徴です。さらに、高次脳機能を司る前頭葉の割合がヒト同様に大きく、高い社会性を持っています。また齧歯類よりも脳が大きいことから、ヒトで用いられる頭部MRIなどの画像診断法を用いて脳を解析することが可能です。
 このようにコモンマーモセットは、多くの観点で齧歯類やマカクサルよりもヒトのモデルに適した特徴を持っており、様々な研究に応用される可能性を秘めています。

世界初の
神経変性疾患
モデルサルの
系統化に成功

世界初の神経変性疾患モデルマーモセット(第三世代、7日齢)

 神経変性疾患とは、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ポリグルタミン病(家族性脊髄小脳変性症を含む)などの疾患の総称で、脳や脊髄にある神経細胞のうち、ある特定の領域の神経細胞が徐々に脱落する病気です。日本国内だけでも400万人以上の患者さんがいると推定されており、高齢化社会の進行に伴って患者さんの数が増えていますが、その原因にはいまだ不明な点が多く、疾患の進行を止める根本的な治療法は確立されていません。
 私たちは、我が国で世界に先駆けて開発された遺伝子改変マーモセット作製技術を用い、ポリグルタミン病の遺伝子改変モデルマーモセット系統の確立に世界で初めて成功しました。現在、このモデル動物系統の特徴について、特にヒト疾患との共通性という観点から、行動学、生理学、生化学、病理学など多方面からの解析を進めています。その結果、発症時期や症状を反映するような新たなバイオマーカーが見つかってきました。このようなヒト-サル共通のバイオマーカーを通して、ユニークなヒト疾患の新規治療法や創薬研究に発展させたいと考えています。

アルツハイマー型
認知症モデル
マーモセット
開発への挑戦

疾患モデルマーモセットの歩行・平衡感覚機能の評価(回転する棒の上を歩くテスト)

 2020年度より、私たちは新たな研究をスタートさせました。それは、世界初の認知症(アルツハイマー病:AD)モデルマーモセットを開発するという大きな挑戦です。超高齢社会化に伴い、認知症の克服は社会的に最も喫緊な課題になっています。例えば、アルツハイマー型認知症の患者数は国内300万人(世界で1800万人)と大変多いのにもかかわらず、まだ有効な治療法や治療薬は開発されていません。私たちは、これまでの神経変性疾患モデルマーモセット系統開発の経験を最大限に生かして、ADモデルマーモセット系統を作出し、ヒト疾患との比較分析を行ってゆく予定です。そして、霊長類モデル動物において初めて発見できるようなバイオマーカーや治療法を研究所内外、国内外の研究者と協力して開発してゆく予定です。このような研究を通して、一人でも多くのアルツハイマー病の患者さんとそのご家族を救うことができるような技術を生み出すことが私たちの夢です。


リファレンス

Tomioka, I. et.al (2017) Transgenic monkey model of the polyglutamine diseases recapitulating progressive neurological symptoms. eNeuro, 4 (2): 0250-16.
プレスリリース 2017年3月24日「神経難病の病態解明と治療法開発へ向けた大きな一歩.神経変性疾患の病態を再現する霊長類モデル動物の作出に成功-」

研究部紹介

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モデル動物開発研究部の研究チーム