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院内でPET薬剤を合成 治療・研究を加速させるホットラボ

TMIC・その他
IBIC/臨床脳画像研究部

脳病態統合イメージングセンター(Integrative Brain Imaging Center; IBIC)・臨床脳画像研究部 ではMRI(核磁気共鳴画像法)やPET(陽電子放出断層撮像法)などの装置を使って精神・神経疾患の画像研究を行っています。IBICにはホットラボがあり、研究用のPET薬剤を自家製造しています。

PET(陽電子放出断層撮像法)とは

 PETは微量の放射線を放出するPET薬剤を体内に注射し、時間とともに変化する放射線の様子を専用のカメラで撮影する検査方法です。検査に使う薬剤の種類を変えることで体内の狙った場所に放射線を分布させ、目的に合った検査を行います。このような方法で撮影された画像を解析することで、体の働きや構造を調べることができます。例えば、ブドウ糖に似た働きをするフルオロデオキシグルコースというPET薬剤は、がんがブドウ糖を活発に取り込む性質を利用して、がんの診療・検診に、広く使われます。また、アルツハイマー病の診断には、脳内に蓄積するアミロイドタンパク質を調べるためのPET 薬剤が使われます。一部のPET 薬剤では製薬会社の工場で合成したものを、当日すぐにPET検査をする施設へ届ける仕組みができているものもありますが、そのようなPET薬剤はごく限られており、自分たちの研究目的に合致した最先端のPET薬剤を選ぶことが困難なのが現状です。
 当部のホットラボ(高放射性物質取り扱い施設)はNCNP敷地内にあり、必要なタイミングでPET 製剤を合成することができる、脳神経研究に特化した研究用PET薬剤合成施設です。このような施設がある病院・研究所は、国内でも非常に限られています。当施設ではセンター内の研究者の要望に応じて研究用PET薬剤を合成し、速やかに臨床や研究に活かすことができます。
 
ホットラボの設備
ホットラボの設備
 
図1合成したPET薬剤を検査する様子
合成したPET薬剤を検査する様子
 

PET薬剤の院内製造のメリット

 脳神経の研究で使われるPET薬剤には炭素11やフッ素18という放射性同位元素が利用されますが、これらの放射能は
半減期(放射能が半分になる時間)が短く、炭素11は20分、フッ素18は110分です。製造するそばからどんどん放射能が減衰してしまうため、決められた手順に沿って短時間で手際よく、正確に合成する必要があります。また、合成した薬剤の品質も非常に重要で、1回合成するごとに手早く各種検査を行い、定められた基準に合格したものだけが、使用されます(図1)。
 当部のホットラボでは人体に投与する薬物を扱うため、施設は高度なクリーンルームになっており、専門のスタッフにより日々厳格な管理のもと、薬剤製造を行っています。
 私たちは現時点では主に、アミロイド、タウ、ドーパミン受容体、神経炎症をみるPET薬剤等を製造し、認知症をはじめ、さまざまな精神・神経疾患の研究プロジェクトに提供しています。また、製薬会社との契約により、治験専用のPET薬剤の合成に
も対応することも可能です。
 PETは多くの精神・神経疾患の病態解明や診断精度の向上、医薬品開発において、ますます重要な役割を果たしていきます。私たちは、PET 薬剤の提供を通じて、精神・神経疾患の研究や治療の進展を支えていきたいと考えています。
 
検品を待つPET薬剤
検品を待つPET薬剤

研究部紹介

脳病態統合イメージングセンター:IBIC

臨床脳画像研究部のメンバー 前列左/神林 聡 研究員、前列中央/髙野 晴成 部長
臨床脳画像研究部のメンバー
前列左/神林 聡 研究員、前列中央/髙野 晴成 部長


▼NCNP内連携組織リンク
NCNP病院 放射線診療部
NCNP病院 精神診療部
NCNP病院 脳神経内科診療部
記事初出
「Annual Report 2023-2024」(2024年12月発行)
広報誌>Annual Report2023-2024