認知症センター

認知症センター

認知症センターは、認知症の臨床・研究にかかわるNCNP全職員のハブ(中心となるところ、拠点)です。

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認知症センター

認知症センターは2017年4月に始動しました。
認知症にかかわる病院・研究所職員の臨床研究・治験の協力を行う、ハブ(hub: 中継地)の役割を持ちたいと思っています。

認知症センターでは独立の専門外来は持っておりません。
かわりに、認知症センターに所属する医師(主に精神科医師、脳神経内科医師)によって、東京都認知症疾患医療センター(地域連携型)を運営しております。
受診ご希望の方は、もの忘れ外来をご覧ください。

オレンジカフェ

「オレンジカフェ」は、認知症の方、そのご家族の方、認知症予防に関心のある方の誰もが参加できる認知症カフェです。毎月1回開催しており、参加者同士の交流や相談、治験等の情報提供等を行っています。認知症センターに所属する医師や認知症看護認定看護師、心理療法士も参加しており、医療や介護に関する相談もできます。参加費は無料ですが、病院内のタリーズコーヒーの席をお借りしますので、1人1品ご購入お願いします。開催日には「みんなでおはなしオレンジカフェ」ののぼりがでています。皆様のご参加をお待ちしています。

過去のオレンジカフェは、こちらから。

オレンジカフェの振り返り.JPG

認知症とは

「もの忘れ」とはどんな症状をいうのでしょうか?

記憶は、(1) 情報を覚えこむこと(記銘)、(2) 情報を保存しておくこと(保持)、(3) 情報を思い出すこと(想起)の3つの過程から成り立っています。「もの忘れ」とは、いったん覚えた内容を思い出せないこと(想起,再生の障害)を意味します。

もの忘れという言葉で、老化によっておこる生理的な記銘力障害と同時に病的な「認知症」を意味することがあります。もの忘れといっても、それが朝ごはんの内容を詳しく思い出せないものなら加齢による記銘力低下でしょうし、朝ごはんを食べたこと自体を忘れるようなら病的と言えるかもしれません。
病的な「もの忘れ」、(認知症)をもたらす疾患のなかで一番多いアルツハイマー病では、いつどこで何が起こったかという日常の出来事や思い出の記憶であるエピソード記憶が初期から障害されるといわれています。一方、初期には記銘力障害は目立たず、注意力や遂行能力障害が目立つレビー小体型認知症のような病気もあります。

記憶であるエピソード記憶が初期から障害されるといわれています。

「認知症」とはどんな状態ですか?

脳の機能は、記憶、見当識、言語、認識、計算、思考、意欲、判断力など多様です。認知症ではこれらの脳の機能(認知機能)が持続的に障害され、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態を指します。日常生活場面では、仕事上のミスが増える、以前のように食事を作れなくなる、金銭管理ができなくなる、などの変化が現れます。また、以前に比べると脳の機能が低下しているものの日常生活は自立しており、認知症とも正常ともいえない状態のことを軽度認知障害と呼びます。認知症には、不安、うつ症状、幻覚、妄想、不眠、興奮などの行動・心理症状を伴うことがあります。
認知症の原因は、アルツハイマー病が最も多く、脳血管障害による認知症、レビー小体型認知症、診断が難しい高齢者タウオパチーなど多数あります。認知症に似た症状を呈するのが、せん妄という状態やうつ病等の精神疾患であり、区別する必要があります。
ですから、認知症の状態は、認知症を引き起こした原疾患によって様々です。記憶力障害はほとんどないのに、社会的生活が重度の障害されるようなこともありうるのです。

様々な認知症

アルツハイマー型認知症(またはアルツハイマー病、Alzheimer’s Disease: AD)は、我が国の認知症の原因疾患として最も多く、60〜70%を占めています。進行性の認知機能(記憶、言語、計算、判断、遂行などに分類される知的な能力)の障害により、徐々に日常生活上の困難が増し、支援や介護が必要な状況となります。65歳以上の発症がほとんどですが、少数ながら65歳未満で発症する場合があり、若年性アルツハイマー病と呼ばれます。大部分の症例は、遺伝や加齢、生活環境、生活習慣など複数の因子が複雑に関与して発症すると考えられている一方で、若年発症の患者さんの中には遺伝性が強いもの(家族性アルツハイマー病)が多く含まれています。

アルツハイマー型認知症の患者さんの脳内には、アミロイドβ(ベータ)およびリン酸化タウという2種類の蛋白質が多量に蓄積しており、これらが神経細胞の働きを障害したり、神経細胞の死滅をもたらしたりするとされています。これら2つの蛋白質のうち、アミロイドβの方が先行して蓄積することや、これまで判明している家族性アルツハイマー病の原因遺伝子がアミロイドβの産生に関わる機能をもっていることから、アミロイドβの蓄積がアルツハイマー型認知症を引き起こすという仮説(アミロイド仮説)が有力です。しかしながら、原因遺伝子がはっきりしない大多数の症例において、なぜアミロイドβが異常蓄積するのか、アミロイドβの蓄積とリン酸化タウの蓄積にどのような繋がりがあるのか、はっきりとはわかっていません。また、アポリポ蛋白Eの遺伝子型によりアミロイドβの蓄積量に差があり、アルツハイマー型認知症の発症リスク(危険性)に大きく影響することがわかっていますが、その理由も解明されていません。 以上のように、高齢発症のアルツハイマー型認知症の原因は解明されていない一方で、青年期までに義務教育レベルの教育をきちんと受けること、聴力低下に対してケアすること、生活習慣病を抑制・コントロールすること、社会的孤立を避けること、運動不足を避けることなどで、発症のリスクを3分の2程度まで下げることができるとする研究があります。

アルツハイマー型認知症の症状は、全ての患者さんに例外なく出現し、経過とともに進行してゆく「中核症状」と、症例によって出現したりしなかったり、内容や程度が異なる、「行動・心理症状(BPSD)」とに分けることができます。

    • 中核症状

      • 記憶障害:
        電話の後で来客があると、電話していたことを忘れてしまうなど、何か別の経験をはさむと、その前に経験したことを忘れてしまう、昔のことは覚えているのに、最近経験したことを忘れてしまうといった、近時記憶障害が初期の特徴です。病気の進行とともに、昔に遡って記憶を失っていく(遠隔記憶も障害されていく)ため、過去の世界に生きているような状態となり、既に亡くなった親類家族が生きているかのような話をしたり、今の住居が自分の住居だと思えなくなったり、現在の家族との関係が混乱したりします。

      • 見当識障害:
        時の見当識障害(曜日や日付、季節がわからなくなる)、場所の見当識障害(自分がいる場所が分からなくなる)、人の見当識障害(身近な家族や兄弟・子供などが判別できなくなる)といった順番で障害が進んでいきます。

      • 判断や遂行機能の障害:
        抽象的な思考をする力や、物事に対する判断力が低下するために、曖昧な指示では何をして良いか分からなかったり、詐欺に遭いやすくなったりします。また、見通しや計画をもって物事を実行する力が低下するために、仕事や家事が進まなくなったり、雑な仕上がりになったりします。

      • 失算・失認・失語・失行:
        計算ができなくなる、物を見ても、それが何で何に使うものか分からなくなったり、言葉が分からなくなったり、日常生活で必要な動作(服を着る、ボタンをとめる、紐を結ぶなど)ができなくなったりします。


    • 行動・心理症状

      • 睡眠障害:
        初期においては不眠となり、夜間や明け方に起きて活動する、昼夜逆転してしまうといった例を認めますが、進行すると、放っておけば一日中寝ているといった過眠の状況が多くなります。

      • 不安・抑うつ:
        心配事があると我慢できず、家族に何度も確認したり、気分が落ち込んで意欲や食欲が低下したりします。比較的初期に出現しやすい症状です。

      • 幻覚:
        実際にはないものが見えたり(幻視)、聞こえたり(幻聴)します。アルツハイマー型認知症では幻聴が多いことが知られており、対して幻視は比較的まれで、「さっきまでそこに人がいた」という訴えの場合でも、実際に見えていたわけではないことが多いです。

      • 妄想:
        事実と異なることを事実だと主張します。記憶障害のために見つからなくなってしまった物を「盗まれた」と主張したり(もの取られ妄想)、配偶者が外出する理由を忘れてしまって「浮気をしている」と主張したり(嫉妬妄想)、食事したのを忘れて「食べさせてくれない」と家族を責めたり、家族にたびたび誤りを訂正されたり行動を修正されているうちに「虐められている」と主張したり(被害妄想)します。また、架空の話を作って記憶が欠落している部分を埋めてしまう、作話と呼ばれる症状もあります。

      • 焦燥・不穏:
        イライラしたり落ち着かなくなったりします。頻繁に尿意を訴えてトイレに行きたがる例もあります。

      • 暴言・暴力:
        感情を抑える力が弱くなるために、やりたいことを止められたり、誤りを指摘されたりして自尊心が傷つけられた時や、介護されていることが理解できずに嫌悪感や不安感、恐怖感を覚えた時などに、暴言や暴力が出てしまうことがあります。

      • 拒否・拒絶:
        自分や周囲の状況が十分理解できなくなるため、恐怖心や自尊心、羞恥心などから、介助を拒否することがあります。

      • 徘徊:
        なんらかの目的をもって家の外に出たところが、自分の居場所や方向が分からなくなり、判断力の低下により助けを求めることもせずに、思いもかけない遠方まで歩いて行ってしまうことがあります。仕事や散歩に出ようとしたり、家人が不在で不安になったり、自宅にいるのに自分の家に帰りたくなったり、外に出る理由は様々ですが、保護された時には本人も忘れており、説明できないことがほとんどです。

      • 異食:
        本来食べ物でないものや、調理せずには食べられない物を、口に入れたり食べたりしてしまうことがあります。

アルツハイマー型認知症の本当の確定診断は、死後の剖検による脳の調査(病理診断)によってなされます。生前の臨床診断はいわば暫定的な診断であり、以下のような診察・検査から、アルツハイマー型認知症らしい所見を得ると同時に、アルツハイマー型認知症以外の病気である可能性を否定することにより、その確実性を高めています。

    • 本人および介護者への問診:
      ご本人・介護者それぞれの把握している症状、日常生活の状況、現在までの経過などの情報から、認知症としての重症度や、疑わしい疾患の検討を行います。

    • 身体的な診察・検査:
      診察においては、主に脳神経系の異常を示す所見があるかどうかを調べます(神経学的診察)。検査としては血液・尿検査、心電図検査、胸部・腹部のレントゲンなどが行われます。神経疾患だけでなく、内分泌・代謝性疾患、循環器・呼吸器・肝臓・腎臓疾患、感染症、悪性腫瘍など、さまざまな身体疾患が原因で認知機能が低下することがわかっている一方で、上記の診察や検査において、アルツハイマー型認知症に特徴的と言えるような所見は存在しません。むしろアルツハイマー型認知症以外の病気を見つけることや、将来的に薬物療法を検討する際の安全性や副作用のリスクを評価することが主目的となります。

    • 神経心理学的検査(心理検査):
      ミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)などの簡便な検査により、認知症の状態にあるかどうかの大まかな判定が可能です。より詳細な認知機能の状態(どの機能がどの程度低下しているのか)を評価するためには、COGNISTATやWMS-Rといった検査が実施されます。リバーミード行動記憶検査(RBMT)は、日常生活に影響がありそうな記憶障害を、早期から見つけ出すのに有用な検査です。他の認知症疾患との鑑別が必要なときには、対象となる疾患に特徴的な所見を評価するための検査(前頭葉機能検査や言語に関する検査など)が追加されます。

    • 脳の画像検査
      診断の精度を高めるためには、脳の形態をみる検査(形態画像検査)と、脳の機能をみる検査(機能画像検査)を組み合わせて施行することが有用です。さらにこれらの画像に統計学的な処理を加えることによって、より早期診断の精度を高めることができます(統計画像)。

      • 脳形態画像検査:
        アルツハイマー型認知症に特徴的な、側頭葉内側部(海馬周辺部)の萎縮を評価するとともに、血管病変(脳梗塞や脳出血)、腫瘍など、他の認知症の原因となる病変の有無を調べることを目的として、頭部CT(コンピュータ断層撮影法)や頭部MRI(磁気共鳴画像法)が施行されます。一般にMRIのほうが情報量が豊富ですが、CTに比べると長時間の安静が必要であり、また、体内金属やペースメーカー等の埋め込み型医療機器により施行が制限されます。
      • 脳機能画像検査:
        脳の血流や代謝の状態を画像化することで、機能の低下している部位がわかります。認知症疾患のそれぞれで、機能低下を認める部位の分布パターンが異なることが知られており、アルツハイマー型認知症では、頭頂葉や後部帯状回、楔前部といった部位の機能低下が特徴的とされています。脳血流シンチグラフィー(脳血流SPECT)や脳FDG-PETが有用とされ、後者の方が画像の分解能が高いのですが、我が国ではアルツハイマー型認知症の検査として保険適用になっていません。

    • その他の検査

      • 脳波検査:
        認知症とまぎらわしい状態としての、意識障害やてんかん発作の鑑別に有用です。

      • 髄液検査:
        アミロイドβやリン酸化タウ蛋白の脳内異常蓄積の有無を推測するために有用な検査ですが、アミロイドに関するものは保険適用となっていません。他に、脳炎との鑑別に有用です。

      • アミロイドPET・タウPET:
        アミロイドβやリン酸化タウ蛋白の脳内異常蓄積を画像化して確認できるため、精度の高い診断が可能となることが期待されますが、いずれもまだ保険適用となっていません。
    • 薬物療法:
      アルツハイマー型認知症の治療薬は、現在4剤が上市されており、それらは作用機序により2種類に分類されます。

      • アセチルコリンエステラーゼ阻害薬:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン
      • NMDA受容体阻害薬:メマンチン

いずれも、脳の神経細胞の働きをいくぶん正常に近づけることで、症状の進行を遅らせるといった効果が期待できますが、残念ながら病気そのものを治療する薬ではありません。アセチルコリンエステラーゼ阻害剤は3剤のうち1剤を選択することになりますが、作用機序の異なるメマンチンは併用することができます。

行動・心理症状が激しく、ご本人・介護者の生活を著しく損なっている場合には、対症療法的に鎮静作用や抗うつ作用、抗不安作用のある薬剤を使用することがあります。しかしながらこのような治療は、一歩間違うと、深刻な身体機能の低下からひいては余命の短縮につながる可能性もあるため、介護や環境調整の工夫だけでは解決しないときに限って、専門医とよく相談の上で慎重に進めていくことが望ましいと言えます。

    • 薬剤によらない治療:
      不安や混乱を軽減して、情緒的な安定と、生活の中で本来の機能がうまく発揮できるような状態を維持することを目的とした治療法として、回想法、リアリティ・オリエンテーション(RO)、音楽療法や動物介在療法などのレクリエーション療法などがあります。また、身体機能の維持や睡眠障害への対策として、作業療法や運動療法が実施されることがあります。

  • ケアのポイント

    • 記憶や脳の機能の改善にとらわれない:
      認知機能の低下について、たびたび試すようなことをされると、誰でも不快な物です。また、加齢と病気の両方により衰えていく人に、むりやり訓練や教育をしようとすることも、労多くして功少ないことといえるでしょう。健康な部分、保持されている能力に目を向け、それが発揮される環境づくりを心がけることが大切です。そして、できなくなっていることについては、「どこを補助してあげればあとは自分でできるのか」を十分検討した上で、ためらいなく援助すべきでしょう。「正しい記憶・認知」を持ってもらうことよりも、どのように対応すれば、混乱を避けて穏やかな気分でいてもらえるかを考えましょう。ときには忘れてしまうことを利用して、その場しのぎや問題の先送りでうまくいくこともあります。

    • 身体機能・健康の保持を重要視する:
      脳は体を健康に生かすために機能している器官です。体から適切な情報が入ってこないと、脳はうまく働かず、体が鈍ると脳も鈍ります。一方、認知症を持つ人は、その症状として意欲が低下するとともに、自身の健康を管理する能力も不十分になっていきます。そこには、介護者が積極的に介入していく必要があるのです。また、日中の身体活動と夜間の休息のメリハリが、行動・心理症状の予防や軽減につながります。

    • がっかりしない、おこらない:
      特に初期のうちは、本人も自分の価値が失われていく不安や、思い通りにできないいらだちに悩んでいることが多いものです。また、経験したことの細部は忘れてしまっても、その時の感情は忘れがたい、つまり自分の行動を正されたり叱責されたりしたときに、なぜ怒られたかは忘れてしまうけれど、怒られて嫌な思いをしたことは記憶に残るのです。身近な人が、自分の行動により落胆しているのを感じることも、とても辛いものです。認知機能の低下により、まとまりなく無意味な行動をしているように見えても、そこには本人なりの理由があります。ご本人の尊厳・プライドを尊重して、「バツの悪い思い」をさせない、頭ごなしに否定しない、無視をしないことが大切です。

    • ひとりでかかえこまない:
      認知症の人の一番近くで、一番時間を使って熱心に介護にあたっている人に限って、被害妄想の対象になりやすいのは皮肉なことです。認知症介護は長期戦覚悟、ともだおれにならないように、介護負担はなるべく多くの人に分散させましょう。介護を部分的にでも人任せにすることに、不安や罪悪感を感じる介護者も少なくないようですが、家族だけでなく、広く多種の人間関係があることで、保たれる能力があります。また、介護者も孤立を避ける必要があります。主治医や専門医、介護の専門家などに相談する機会を確保するとともに、家族会や介護者の会などに参加することも勧められます。介護者の不安やストレスの軽減は、介護されるご本人の安定にもつながります。

参考文献



血管性認知症(vascular dementia: VaD)

脳血管病変に起因して認知症を発症するのが血管性認知症です。脳血管障害(脳卒中)には脳梗塞(脳血管が詰まる)や脳出血(血管が破れる)、くも膜下出血などが含まれます。病態は多様ですが、認知症発症と脳血管障害との間に直接的な因果関係が必要とされます。

NINDS-ARIEN診断基準(Romacら、1993年)では、多発梗塞性認知症、小血管病性認知症、戦略的部位(高次脳機能に重要な脳部位)の単一病変による認知症、低灌流性血管性認知症、出血性血管性認知症などに分類されています。血管性認知症は我が国ではアルツハイマー型認知症に次いで多く、両者の合併もしばしばみられます(混合型認知症と呼ばれます)。

脳血管障害のためその下流の血流障害により神経細胞が障害を受け、脳局所および神経ネットワークの障害として症状が出現します。脳血管障害の発症には高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が深く関わります。これらの危険因子が血管の動脈硬化を起こし、脳血管病変をもたらし、さらに結果として認知症に至ります。

一方、生活習慣病など危険因子に由来する脳血管障害ではなく、近年では遺伝性血管性認知症(CADASILやCARASIL等)やアミロイドというタンパク質が蓄積する脳アミロイド血管症(遺伝性、孤発性)なども報告されています。

障害された脳血管、その影響する脳の範囲、程度、時間的経過等によって異なります。まず、脳卒中の身体症状として麻痺や感覚障害、構音障害、嚥下障害の合併がしばしばみられます。認知機能では記憶障害よりも遂行機能障害、注意障害が目立つことが多く、失語、失行、失認などの高次脳機能障害がみられることがあります。また、無気力、抑うつ、焦燥、攻撃性などの精神症状も少なからずみられます。これらが緩徐進行性または階段状に進行・悪化していきます。

    • 問診および身体診察:
      脳血管障害の既往、合併症、危険因子の有無の確認。

    • 神経学的検査:
      麻痺などの局所神経症候があるか確認。

    • 血液検査:
      脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症など生活習慣病の有無を確認。

    • 心電図:
      特に脳卒中の危険因子である心房細動の有無を確認。

  • 神経心理検査:
    全般的な認知機能検査に加えて、遂行機能、注意機能、失語、失行、失認などを評価する高次脳機能検査が行われることがあります。
  • 脳画像検査:
    CTやMRIにより脳形態・解剖学的情報を得ると共に、脳梗塞や脳出血を検出します。特にMRIではT1強調画像、T2強調画像、FLAIR法などの撮像法を用いて高い解像度の下、脳血管障害の詳細な検討および経時的変化の観察が可能です。脳血流SPECTでは障害部位周辺の血流低下を認めますが、アルツハイマー型認知症などの他の認知症の合併の有無の参考になります。

まず、脳卒中の再発予防・進展予防として、血管障害の危険因子である高血圧を中心とした生活習慣病の治療が不可欠です。禁煙や過度の飲酒を控えることも推奨されます。脳梗塞の再発予防のため抗血栓薬が状況に応じて使用されることがありますが、脳出血の合併症がありうるため注意が必要です。また、我が国では血管性認知症としては保険適応外ですが、アルツハイマー型認知症の合併が多いことから、アルツハイマー型認知症の治療薬として保険承認されているドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンなどの投与されることがあります。

心理・行動症状に対しては、抑うつや意欲低下・無気力などの症状に抗うつ薬など、焦燥や攻撃性などの症状には抗精神病薬などが使用されることがあります。 ただし、血管性認知症では内科的合併症が多くかつ脳卒中の再発に注意しなければならないため、投与薬剤が多くなりがちであり、慎重な薬剤調整が望まれます。また、血管性認知症では身体症状を伴うことが多いことから、より手厚い介護が必要になりやすいと考えられます。


参考文献

  • 認知症疾患診療ガイドライン2017 監修:日本神経学会 編集:「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会 医学書院
  • 認知症ハンドブック 編集:中島健二、天野直二、下濱俊、冨本秀和、三村將 2013年 医学書院



レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies: DLB)

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies: DLB)は、進行性の認知機能の障害、幻視やうつなどの精神症状、パーキンソン症状、立ちくらみや便秘といった自律神経症状など、様々な症状が現れます。

我が国では、アルツハイマー型認知症、血管性認知症に次いで多い認知症です。60〜80歳台に多く見られ、性別による差はほとんどありませんが男性にやや多いとされています。家族に遺伝することは稀です。

レビー小体型認知症では、脳や自律神経の神経細胞の中に、αシヌクレインというタンパク質を主成分とするLewy(レビー)小体とLewy神経突起が出現することで、神経細胞がダメージを受けます。

これに伴い、様々な神経伝達物質(神経細胞と神経細胞の間で情報伝達を担う物質)の障害が起こり、多様な精神症状や神経症状が生じると考えられています。

アルツハイマー型認知症を合併することがあり、その場合は認知症の進行が速いと言われています。

レビー小体型認知症には、下記のような多様な精神症状、神経症状が現れます。

    • 認知機能の低下、動揺性の認知機能:
      初期には記憶力の低下よりも、注意力の低下、顔や物の形などを識別できないなどの症状(視空間構成障害)が目立つのが特徴的です。注意力や覚醒レベルの変動により、症状にムラがあることが多く、ぼーっとしている時としっかりしている時があります。進行すると、アルツハイマー型認知症と同様に、記憶力の低下や見当識障害などが目立つようになります。

    • 幻視:
      幻視が繰り返し現れることが特徴的です。幻視の内容は、人物や動物、光、紐、人影のようなものからはっきりとしたもの、動いているものからじっとしているものまで様々です。夕方など薄暗い時間帯、注意や覚醒レベルが低下した時に起こる傾向があります。

    • レム期睡眠行動異常症:
      レビー小体型認知症を発症する数年以上前から、レム期睡眠行動異常症(眠っている間に、寝言を言う、大声で叫ぶ、手足をばたつかせる、歩き回る、暴力的になり隣で寝ている家族や壁を殴るなど)が現れることがあります。

    • パーキンソン症状:
      動きが遅くなる、ふるえ、小刻み歩行、筋肉が緊張し動きが歯車のように硬くなる、前かがみの姿勢、表情の変化が乏しくなるなどのパーキンソン症状が現れる場合があります。

    • うつ症状:
      初期からうつ症状が現れることがあります。特徴として、強い不安感、そわそわと落ち着かなくなる焦燥感、意欲の低下、頭が働かない、決断できない、集中できないと感じることが目立ちます。

    • 抗精神病薬に対する過敏性:
      精神症状に対して処方された少量の抗精神病薬で、パーキンソン症状や飲み込みにくさ、強い眠気、意識障害などの副作用が出現しやすくなります。

    • 自律神経症状:
      自律神経系の機能異常により、便秘、立ちくらみ、起立性低血圧などの自律神経症状が初期から現れることがあります。

    • 姿勢の不安定さ、繰り返す転倒、失神または一過性で原因不明の意識障害:脳や自律神経系の機能異常により、失神を繰り返し、原因不明の一過性の意識障害が生じる場合があります。注意力の低下や視空間構成障害、起立性低血圧もあいまって、転倒を繰り返すことがあります。

  • その他の症状:
    過眠、嗅覚の低下、幻視以外の幻覚(聴こえないはずの音や声が聴こえるという幻聴など)、妄想などが現れることもあります。

レビー小体型認知症を診断するためには、下記の問診や検査を行い、総合的に診断します。

    • 症状や既往症等についての問診:
      日常生活での様子を把握するため、ご本人の自覚している症状に加えて、ご家族や介護している方からの情報もお聞きします。また、現在内服しているお薬についても確認します。

    • 神経症状の診察:
      パーキンソン症状などの神経症状の有無や程度を評価します。

    • 血液・尿検査、心電図検査、胸部・腹部のレントゲン:
      認知症に似た症状を引き起こす内分泌・代謝性疾患、呼吸器・肝臓・腎臓疾患、神経感染症に罹患していないかを確認するために行います。また、診断後に備えて、治療薬を使用できる体の状態かどうかを確認します。

    • 神経心理学的検査(心理検査:)
      認知機能が低下しているかどうかを評価します。まず、簡便な検査として、ミニメンタルステート検査(MMSE)や改訂長谷川式認知症スケール(HDS-R)などを行います。簡便な検査は、明らかな認知症かどうかを確認するために有用ですが、認知症の初期や軽度認知障害の段階では見逃す可能性があります。認知症を早期から的確に診断するために、また、どのように機能が低下しているのかを評価するために、これらの検査よりも難易度が高い詳細な検査(COGNISTAT、WMS-R、リバーミード行動記憶検査など)を行う場合があります。

    • 画像検査:
      症状や状態、体内金属(心臓ペースメーカーなど)の有無等に応じて、以下の検査を行います。

      • 頭部CT(コンピュータ断層撮影法)/頭部MRI(磁気共鳴画像法):
        脳の萎縮や脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの有無、その部位や程度を診断します。レビー小体型認知症では、アルツハイマー型認知症で見られるような側頭葉内側部、海馬の萎縮は軽度です。そのため、他のタイプの認知症やパーキンソン症状を引き起こす疾患と区別するために行います。

      • 脳血流SPECT(単一光子放射コンピュータ断層撮影法):
        99mTc-ECDというごく微量の放射性物質を注射し、脳の血流が低下しているか、どの部位の血流がより低下しているかを評価します。レビー小体型認知症では、視覚をつかさどる領域を含む脳の後頭葉という部位の血流低下が見られます。

      • MIBG心筋シンチグラフィ:
        123I-MIBGというごく微量の放射性物質を注射し、心臓の交感神経の働きを調べる検査です。レビー小体型認知症では、異常が見られます。アルツハイマー型認知症や他のパーキンソン症状を呈する疾患(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症など)と区別するために有用な検査です。

      • ドパミントランスポーターシンチグラフィ(ダットスキャン):
        123I-ioflupaneというごく微量の放射性物質を注射し、脳の線条体という部位のドパミン神経の変性や脱落を調べる検査です。レビー小体型認知症では、異常を示します。アルツハイマー型認知症と区別するために有用な検査です。
  • その他の検査:

      • 終夜ポリソムノグラフィ:
        レビー小体型認知症では、筋緊張低下を伴わないレム睡眠が認められます。

      • 脳波検査:
        レビー小体型認知症では、脳の後頭葉という部位で異常脳波(徐波化)が認められます。

    • 髄液検査:
      アルツハイマー型認知症と区別をつけるため、または、レビー小体型認知症とアルツハイマー型認知症を合併しているかどうかを確認するために行います。

レビー小体型認知症に対する治療として、薬剤による治療、適切なケアや環境調整などがあります。

    • 薬剤による治療:
      現時点で、レビー小体型認知症を根本的に改善させる薬剤は存在しません。ドネペジルだけが、レビー小体型認知症の認知機能と精神神経症状に対して保険適応が認められています。幻視やうつ症状、不安、不眠等の精神症状、パーキンソン症状、レム期睡眠行動異常症、起立性低血圧や便秘等の自律神経症状が強く現れている場合は、それぞれに対して薬剤による治療を行います。ただし、副作用の生じやすさから処方薬の選択や量の調整は慎重に行う必要があるため、専門医にご相談ください。

  • 適切なケア・環境調整:
    ご本人は不安や孤独感を強く感じていることがあるため、介護をしている方は、ご本人の言葉に共感的・受容的に耳を傾け、安心感を与えるように働きかけてください(パーソンセンタードケアを基本としたアプローチ)。生活リズムの乱れは症状を悪化させるため、日中に適度な運動や活動を行い、夜間に睡眠を確保できるようにすることが必要です。ご本人が興味を持てる余暇活動をすること、デイサービスなどで軽い運動やレクリエーションに参加することは、認知機能の維持やコミュニケーションの改善につながります。パーキンソン症状に対しては、初期から体操やリハビリテーションなどにより、筋肉や関節の硬化予防や身体機能の維持を心がけることが効果的です。薄暗い部屋では幻視が出現しやすいため部屋の電気をつけて明るくする、つまずきや転倒防止のために自宅をバリアフリーにするなど、安心して生活できるように生活環境を工夫することも有効です。介護しているご家族などの疲労や精神的ストレスが、ご本人の精神状態に大きな影響を与えることもあるため、介護福祉サービスの利用や介護している方ご自身のケア(相談や休息、リフレッシュ、余暇活動など)も重要です。

参考文献

  • McKeith IG, Boeve BF, Dickson DW, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: Fourth consensus report of the DLB Consortium. [Neurology. 2017 Jul 4;89(1):88-100]
  • 認知症疾患診療ガイドライン2017、監修 日本神経学会、編集 「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会、医学書院、2017年
  • 認知症診療実践ハンドブック、編集者 山田正仁、中外医学社、2017年
  • レビー小体型認知症―臨床と病態―、編集者 井関栄三、中外医学社、2014年
  • 見て診て学ぶ 認知症の画像診断 改訂第2版、編集 松田博史、朝田隆、永井書店、2004年



前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)とその関連障害

前頭側頭型認知症(FTD:Frontotemporal Dementia)とは、脳の前頭部および側頭部のニューロン(脳細胞)が徐々に失われていくことを特徴とする障害です。

FTD患者は、行動障害から言語や運動の機能障害に至るまで、さまざまな臨床症状を呈することがあります。正確な原因はわかっていませんが、前頭側頭葉変性症は、誤ったタンパク質が異常に蓄積され、それが脳細胞を混乱させ、最終的には脳細胞の変性につながると考えられています。

FTDが進行すると、認知能力や人格、そして最終的には自立性が徐々に失われていきます。病理学的または遺伝的に確定診断がついた場合は前頭側頭葉変性症(FTLD: Frontotemporal Lobar Degeneration)と呼ばれており、日本では難病に指定されています。

→難病情報センター(前頭側頭葉変性症)

FTDの症状は、多くの場合、50歳から65歳の間に現れます。

FTDの臨床診断には、以下のようなものがあります。

行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)は、前頭側頭型変性症の中で最も一般的な症状です。この変性は、脳の前頭前野および側頭前野の進行性の萎縮(細胞の喪失)によって特徴づけられ、高度な思考、人格、行動に変化をもたらします。

行動変型前頭側頭変性症の代表的な症状は以下の通りです。

    • 脱抑制:
      脱抑制はbvFTDの特徴であり、社会的に不適切な行動(例えば、見知らぬ人に不適切に近づいたり、触れたりする)、マナーや礼儀の欠如(例えば、パーソナルスペースの侵害、無礼や不快な発言)、衝動的で軽率な行動や不注意な行動(例えば、無謀な買い物や売り込み)などが見られます。

    • 無気力/惰性:
      bvFTDの患者はまた、興味、意欲、または意欲の全般的な喪失を呈します。極端な場合には、患者は基本的な活動(例:入浴、着替え)を開始したり、継続したりするために、誰かの指示がないと何もしなくなります。

    • 共感性の喪失:
      bvFTD患者は、感情的に冷淡であったり、無関心であったりして、他人の痛みや苦痛をあからさまに無視しているように見えることがあります。

    • 保続的、強迫的な行動:
      これらの行動は、叩く、引っ掻く、摘むなどの単純な反復行動から、注文、掃除、収集などの複雑な強迫行動にまで及びます。

    • 食習慣、食生活の変化:
      食品の嗜好の変化(甘いものが好きになる、特定の種類の食品のみを食べるなど)が起こったり、無分別な暴飲暴食や体重増加が起こったりすることがあります。

  • 実行機能障害:
    前頭葉の細胞損失のために、bvFTD患者は、複雑な思考や、計画、組織化、精神的な柔軟性、アイデアの生成などの「実行機能」の障害を示しています。

原発性進行性失語(PPA)とは、その名の通り、脳卒中や頭部外傷、がんのようにMRIで簡単にわかる神経疾患ではなく、進行性の言語障害(失語症)のことです。 原発性進行性失語には、

原発性進行性失語症(PPA)の意味的変化の臨床的特徴:

  • 命名の障害
  • 言葉や物の理解が難しい

意味的認知症(SD)としても知られる意味型PPAでは、物の名前を言ったり、理解したりする能力に障害があります。これは、脳内の物体や概念の表現する機能の障害が原因であると考えられています。 物体の名前がわからないため、このような人の発言は内容がないように見えることがよくあります。 同様に、他の人が何を言っているのかを理解するのが困難な場合もあります。 これは概念全体の障害であるため、意味型PPAの人は、物体を適切に認識したり、使用したりすることが困難になることもあります。

また、意味型PPAでは、簡単な言葉でも書いてある言葉が読めなくなります。さらに有名人などの人の顔を認識することができなくなります。

さらに意味型PPAの患者の一部では、時間の経過とともに行動様式や社会的認知の障害が現れることがあります。例えば、異常に頑固になったり、これは、硬直性や精巧な儀式を伴うことがあり、それが宗教的なものになることもあります。 また、挑発しなくても爆発的に怒ることもあります。 逆に、そのような社会性の問題が出現し、後から意味型PPAと診断されるケースもあります。

意味型PPAの原因:
意味型PPAの最も一般的な原因は、TDP-43として知られている脳細胞の核に見られるタンパク質の蓄積です。TDP-43は、細胞がDNAからRNAを生成する際のエラーを修正するために重要であり、様々な脳のプロセスに関連する炎症から脳細胞を保護するのに役立ちます。TDP-43は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の多くの人の脳にも蓄積しています。また、微小管関連タンパク質のタウの集合体、またはアルツハイマー病の病理学と一致するタウとアミロイドβの組み合わせが認められることもあります。

非流暢/失文法型PPAの臨床的特徴:

  • スピーチの生成速度の低下
  • 文法の難しさ
  • 緘黙

いくつかの特徴は、進行性非流暢性失語症(PNFA)としても知られている非流暢/失文法型PPAを特徴づける。 最も顕著な特徴は、音声生産の減速です。 健康な成人は通常、1分間に約140語の速度で話しますが、非流暢/失文法型PPAでは、1分間に約40語の速度で平均的に話す、または1秒間に1語未満です。 この発話速度の低下は、主に運動障害によるものではありません。 また、これは一般的な認知計画や組織の障害によるものでもありません。 その代わりに、単語を文章に統合するという特殊な障害があるように思われます。

私たちは、文の中に単語を統合することを文法と呼んでいますが、これは、新しい単語列を使って創造的に文を構築する人間特有の能力です。 文法とは、文中の単語が互いに隣接していなくても、文中の単語を相互に関連付けるルールの集合である。 それは、非流暢/失文法型PPAでは、文を構築するためにこれらの文法的なルールを使用して困難を持っていることが表示されますので、深遠な発話を遅らせています。

時間が経つにつれて、非流暢/失文法型PPAでは、事実上無言になります。 この文法的欠損はまた、文の理解に影響を与えることができ、特に長文であり、その意味のために文法に依存している文があります。 同様の文法的な問題は、読み書きにおいても見られますが、これらの問題は口頭での発話の問題よりも遅れて現れることがあります。 これは、言語の使用速度は読み手や書き手のコントロール下にありますが、口頭での発話や理解のコントロールはより困難だからです。

失語症にはいくつかの形態があり、時間の経過とともに徐々に悪化していく言語障害があります。 これらは頭部外傷、脳卒中、がん、その他の観察可能な脳の二次的変化によるものではなく、脳機能の本質的な障害であるように思われるため、このクラスの状態を "原発性 "と呼ぶ。

ロゴペニック型PPAの臨床的特徴:

  • 繰り返しの障害
  • ネーミングの難易度

ロゴペニック型PPAのその他の臨床的特徴:
ロゴペニック型PPAの人は、反復や命名の困難に加えて、他の障害を持つことがあります。 その中には、流暢な発話が困難であったり、単一の単語の理解力が低下したりすることがあります(物の理解力は十分に保たれていますが)。 このように様々な障害があるため、PPAの中でも最も診断が難しい疾患の一つです。

時間の経過とともに、ロゴペニック型PPAの多くの人はエピソード記憶の障害を発症することがあります。 学習と記憶が困難なため、会話の途中で自分自身を繰り返したり、一日の間に同じ質問を繰り返ししたり、最近起こった出来事や会話を忘れたりすることがあります。 また、場所や時間の見当識障害が出現することもあります。


上記のものがあり、それぞれ臨床症状が異なります。PPAの分類は臨床的であり、病理学や遺伝子の観点からは必ずしも対応しませんが、非流暢性/失文法型や意味型ではFTLDとの関連が強く、ロゴペニック型はアルツハイマー病との関連が強いとされています。

皮質底質症候群(CBS)は、脳の大脳皮質または灰白質(外表面)に影響を及ぼす進行性の疾患です。脳のこの部分は、高次の認知に最も関係しています。CBSはまた、大脳基底核と脳幹にも影響を与え、運動の円滑な実行を司る脳の深部構造にも影響を与えます。CBSは認知機能と運動の両方を司る脳の部分に影響を与えるため、この状態ではこれらの能力の両方が影響を受ける可能性があります。CBSを持つ人は、動きが遅く、動きが硬直し、震えがあるため、しばしばパーキンソン病と混同されることがあります。

症状:
CBSの患者は、以下の認知症状と運動症状のいずれかを示すことがあります。

認知症状:

  • 失調、またはフォーク、はさみ、またはハンマーを使用するような日常的な物での日常的な動作の実行が困難。また、着替えが困難な場合もあります。
  • 視覚空間障害、または物を見たり、空間内の適切な位置を理解したりすることに問題があります。視覚空間障害のある人は、空間内の物体の位置を特定したり、運転中に距離を判断したり、食器棚のような複雑な視覚配列を理解したりすることが困難な場合があります。
  • 尖頭症、または計算や数の知識が困難な場合。
  • 患者の意識がなくても手足が位置を決めたり、動作を行ったりする、外来手足現象。

運動:

  • ブラキネジア、または遅い動き。歩くのが遅くなったり、家の周りのことをするのに時間がかかったりしていることに気づくかもしれません。
  • 震え。
  • 手足が強制的に動くことに抵抗がある硬直。
  • ジストニア、または過剰な緊張や硬直によって引き起こされる四肢の姿勢。ジストニアでは、手足がカールしているように見えたり、不快に曲がっていることがあります。
  • ミオクローヌス、または電光石火のような、ぎくしゃくした動き。

さらに、CBS患者の中には言語障害を発症する人もいます。話すのが遅くなったり、言葉が不規則になったりすることがあります。言葉を正しい順番に並べることができなかったり、言葉を省いたりすることに問題があるかもしれません。また、文章を書く際の文法やスペルにも問題があるかもしれません。これらのケースでは、原発性進行性失語症の非流暢型と診断されることがあります。

概要と発症年齢:
進行性核上麻痺(PSP)は、可動性、視力、言語、認知に影響を及ぼす進行性の疾患です。症状は40歳から始まりますが、診断の平均年齢は60歳代であることが多いです。

症状

PSPの一般的な症状:

  • 眼球運動の喪失。これは、目を上下に動かすことが困難であることが原因であり、この障害の中核的な特徴である。
  • 頻繁に転倒します。PSPでは、バランスおよび安定性が影響を受けることがあり、その結果、多数の転倒が発生します。
  • ブラキネジア、またはゆっくりとした動き。歩くのが遅くなったり、家の周りのことをするのに時間がかかったりしていることに気づくことがあります。
  • 嚥下障害
  • 話すことが困難、例えば、ゆっくり話す、非常に小さな声で話す、または不鮮明な言葉を使うなど。
  • 震えはパーキンソン病に比べて非常にまれですが、PSPでは見られます。

PSPでは、バランスを崩しているように感じ、頻繁に転倒することがあります。これは、転倒時に自分の身を守るために手を前に出すなどの防御反応が鈍くなることがあるので、特に心配です。また、個人の動きが鈍く、硬直している場合もあります。歩行やその他の視覚誘導活動は、目を上下に動かすことが困難になることで、さらに支障をきたすことがあります。最終的には、眼球が正中線上に固定され、自発的な眼球運動ができなくなります。また、飲み込みや会話が困難になることも報告されています。

思考および人格の変化:
さらに、PSPの患者さんの中には、認知的および人格的な変化を経験する人もいます。これらの変化は、人格、行動、および食事の計画や金銭管理などの複雑な活動を完了する能力に影響を与え、視覚空間的な困難をもたらすことがあります。一般的な変化には以下のようなものがあります。

      • 無気力、または以前の趣味にほとんど関心を示さず、家族の集まりなどのグループ活動への参加が減少する。
      • 性欲亢進、社会的状況で不適切または恥ずかしい発言をしたり、公共の場で見知らぬ人に近づいたりするなどの抑制。
      • 遂行困難、または複雑な活動の計画と完了、組織化、および問題解決における問題。遂行能力に問題がある人は、小切手帳の残高確認、食料品の買い物、または食事の準備などに問題がある場合があります。
      • 視覚空間障害、または自己と物体、または環境内の2つの物体間の空間的関係を決定することの困難。

概要と発症年齢:
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロン病(MND)やルー・ゲーリック病としても知られていますが、筋肉の自発的な制御を司る脳と脊髄のニューロンの進行性の変性によって特徴づけられる疾患です。これらのニューロンが失われ、その結果として生じる筋力低下が障害を増大させていきます。 最終的には嚥下や呼吸の筋肉が影響を受けるため、ALSは必然的に生命を脅かす障害となります。

一般的には50歳代で発症しますが、若年者や高齢者でも発症することがあります。 男性は女性よりもALSを発症するリスクが高いとされていますが、その理由は明らかにされていません。

症状:
ALS患者は以下のような筋肉症状や認知機能症状を経験することがあります。

筋:

  • 手、腕、足、体幹の筋肉の弱さ、疲労、協調性の低下、または協調性の低下に加えて、嚥下筋、発語筋、呼吸筋の弱さが見られます。 このため、歩行、食事、着替え、入浴、排泄、嚥下、会話、呼吸などの日常生活動作が困難になります。
  • 筋痙攣や痙攣(筋痙攣)は、しばしばこの脱力に伴うものです。
  • ALS患者は泣いたり笑ったりすることがあり、これらの暴発をコントロールすることが困難です。

認知機能:
ALS患者の約10%では、社会的行動の調節や他人の前での適切な行動に障害が併存していることがあります。 多くの場合、この障害は前頭側頭部変性症(FTD)の一種であるが、他の障害も珍しくありません。 ALSと認知障害を併発している人は、金銭管理、人前での適切な行動、他人への配慮が困難な場合があります。具体的には、以下のようなことに気づくかもしれません。

認知と行動:

  • 遂行困難、または複雑な活動の計画と完了、整理、および問題解決における問題。遂行困難を伴う個人は、小切手帳のバランスを取ったり、買い物をしたり、食事の準備をしたりするなどの作業に問題がある場合があります。
  • 脱抑制(性欲亢進、社会的状況での不適切な発言や恥ずかしい発言、公共の場での見知らぬ人への近づき方など)。
  • 万引き、制御不能なギャンブル、または無謀な支出などの衝動性。
  • 毎日同じ時間に洗濯をしたり、特定の順番で食べ物を食べたり、家の中を決まった道を繰り返し歩いたりするような、複雑な儀式や固定観念。 個人は、鳥や時間のような特定のトピックに「行き詰る」ようになるかもしれません、繰り返し話をするか、または繰り返され、いつも変更されない固定のジョーク、フレーズ、またはコメントを繰り返します。
  • 食欲や食べ物の好みの変化、例えば、デザートだけを切望して食べたり、コントロールできずに飲食したり、一度に多くの食べ物を口に入れたり、食べ物以外のものを食べようとしたりする。
  • 無気力または惰性、以前の趣味や興味にほとんど興味を示さない、または家族の集まりなどのグループ活動に参加しない。また、買い物に行ったり、服を着たり、食事をしたりするなどの活動をするための「行動を起こす」ことが困難な場合もあります。
  • 共感力の喪失、または他者のニーズや感情を理解することができない。 個人は冷たく、感情的ではないように見えるかもしれないし、愛する人の心配事に共感できないかもしれない。
  • なぜその行動が文脈に合わず、他者を苦しめるのかについての洞察力の欠如。
  • 運動ニューロン疾患型FTD(FTD-MND: Frontotemporal Dementia and Motor Neuron Disease)など

FTDには様々な病態があり、臨床症状も様々なものがあります。上記は代表的な病態の症状ですが、この他にも主に神経症状を示すFTDがあり、脳神経内科が治療・対処する必要がある場合があります。

FTDは、病理学的には神経細胞やグリア細胞(脳神経細胞の周りにある細胞)にタンパク質が凝集した封入体と呼ばれるものが蓄積します。主な成分としては、

  • タウタンパク
  • TDP-43(TAR DNA-binding protein of 43kD)
  • FUS(fused in sarcoma)

などが知られています。現在FTDに対する根本治療薬はありませんが、FTDで見られる上記の異常タンパクを標的とした治療の開発が行われています。

FTDの症状は50~60歳代に現れ、行動や性格の劇的な変化を伴うことが多いため、正確な診断が下されるまでに精神科医など複数の専門家に紹介されることも珍しくありません。FTDの診断には、詳細な病歴を収集し、徹底的な神経学的検査を行います。

  • 病歴と詳細な神経学的検査
  • 血液検査及び髄液検査
  • 言語、行動、記憶、実行、視覚空間機能を評価するための神経心理学的検査。
  • 脳の部位がどこで、どの程度広範囲に萎縮しているかを調べるための神経画像検査。これらの神経画像検査には、以下のようなものがあります。
    • MRI(磁気共鳴画像法)
    • SPECT(単一光子放射コンピュータ断層撮影法)
    • PET(陽電子放射断層撮影法)

などがあります。


参考文献


高齢者タウオパチー


    • 病理:
      タウ蛋白のうちでも4リピートタウ(4Rタウ)が異常凝集、蓄積する。嗜銀顆粒と呼ばれる構造が病理的に観察される。神経細胞の樹状突起やその分枝に見出される。神経細胞内にpretangle(プレタングル)と呼ばれる繊維までには至らない構造をもつタウ蛋白の凝集がみとめられる。神経細胞以外の細胞でオリゴデンドロサイト(乏突起細胞)と呼ばれる細胞にはcoiled bodies(コイルドボディ)と呼ばれる、鞭や釣り針のような形の構造がみとめられる(これはAGDだけではなく、アルツハイマー病をはじめ他のタウオパチー(タウがたまることにより生じる疾患群)にも認められる)。また、バルーンニューロン(ballooned neuron)という神経細胞の細胞体が膨らんで観察される構造もある。
      AGDの病変の脳内での広がりは最近までNCNP病院に在籍した齊藤祐子らの業績によって知られており、ステージ分類がなされている。嗜銀顆粒の広がりによりStage IからStage IIIまでに分離される。Stage IIIに至る症例では、生前の認知症との関連が報告されている。
      AGDの高齢者に占める割合は、わが国の報告では、平均79.7歳の190例で43.2%に認められた。高齢者ではかなりの率で認められるが、認知症に占めるAGDの割合については報告によって5%程度から12.5%まで幅があるが、いずれにしろ少なくない疾患である。

    • 臨床診断:
      現時点では困難である。アルツハイマー病に比べて高齢で、記銘力低下で発症し、進行も緩徐である。易怒性・頑固などの性格変化があるという複数の報告がある。

    • 治療:
      コリンエステラーゼ阻害剤の効果は少ないと言われている。

    • 検査:
      まだ検査で有用なものはないが、MRIでは左右差を伴う、迂回回を中心とする側頭葉内側面前方の萎縮が目立つ。FDG-PET, 脳血流SPECTなどの機能画像では、左右差を伴う側頭葉内側面の低下がある。アミロイドPETは陰性である。


    • 加齢に伴い海馬を中心とした領域に神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT)が現れるものを総括して呼ぶ(Craryら,2014)。PARTは疾患名というより、NFTが内側側頭葉を中心として分布し、かつ老人班はほとんどない病理学的状態であり、臨床的に認知症を示すときにはSD-NFT(神経原線維変化型老年期認知症, senile dementia of the neurofibrillary tangle type)と呼ぶ。SD-NFTは1992年にUlrichらによりtangle-predominant dementia(TPD)として報告され、その後、様々報告が行われるとともに名称も様々に記述されてきた。

    • 病理:
      アルツハイマー病に認められる老人班を伴わずに、アルツハイマー病と同様のNFTが海馬辺縁系に観察される。

    • 臨床像:
      後期高齢者に発症し、初発症状は記憶障害で、他の認知機能や人格は比較的保たれる。緩徐に進行する。妄想の出現も少なからずある。

    • 認知症に占める頻度:
      2%程度から5%程度である。

    • 画像検査:
      海馬の萎縮はあるが、大脳皮質の萎縮は相対的に軽度である。アミロイドPETは陰性である。


    • 側頭葉や前頭葉に萎縮があり、大脳皮質に多数の神経原線維変化(NFT)が病理的に観察される。老人班はない。報告者の名前をとって、小坂・柴山病とされることもある。 老人班はない。

    • 臨床像
      初老期に発症し、緩徐に進行し、記銘力障害や見当識障害が主症状である。前頭側頭型認知症と診断される例も多い。落ち着きのなさや、自発性欠如、多幸などを経て、健忘性失語や反復言語などもあらわれ、齊藤らによると、パーキンソン症状(錐体外路徴候)、錐体路徴候も出現し、嚥下障害なども出て寝たきり状態となる。

    • 治療:
      有効な治療法は現時点では明らかではない。

    • 頻度:
      東京都健康長寿医療センターや岡山大学の報告では1%にも至っていない稀な疾患である。


認知症の稀な原因

認知症には進行性核上麻痺、コルサコフ症候群、ビンスワンガー病、HIV、クロイツフェルトヤコブ病(CJD)など、まれですが他にも多くの原因があります。多発性硬化症、運動神経病気、パーキンソン病、ハンチントン病の人も認知症を発症するリスクが高くなります。

臨床研究・臨床試験・治験

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市民公開講座

2020年度市民公開講座

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市民公開講座

認知症治療の現状と進歩

  • 日時:2021年3月6日
  • 方法:YouTube「NCNPchannel」にて配信予定
  • 詳細情報については下記PDFを御覧ください。
R.2認知症市民公開講座ポスター 30Nov2020.pdf