国立精神・神経医療研究センター
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リカバリー(Recovery)

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リカバリーとは、「人々が生活や仕事、学ぶこと、そして地域社会に参加できるようになる過程であり、またある個人にとってはリカバリーとは障害があっても充実し生産的な生活を送ることができる能力であり、他の個人にとっては症状の減少や緩和である」と定義されます1)

リカバリーとは利用者個人のものであり、利用者自身が歩むものです。その概念は他者とのつながり、将来への希望を持つこと、生活の意義・人生の意味などを含む広いものとなっています1,2)。また、リカバリーの内容やペース、目標の在り方は人によって大きく異なり、支援者/専門家の助けを必要とする場合と必要としない場合があります3)。すなわち、リカバリーの文脈を考えるとき、主役(意思決定をする人)は常に利用者本人ということになります。

利用者個人にとって、リカバリーは夢や希望にたどり着いた結果というより、結果に行き着くまでの旅路(プロセスあるいは過程)であることが強調されています1,2,3)。しかも、そのプロセス(過程)は必ずしも右肩上がりの直線ではないかもしれません3)。ただし、支援者/専門家が利用者のリカバリーを応援する機会を得た際には、個々の利用者が希望する自分になるための「プロセス(過程)」とその自分になった「アウトカム(結果)」の2つの側面を見る必要があると指摘されています4,5)。支援者/専門家は2つの側面を考えることで、自身の支援を適切に振り返ることが可能となります4,5)

リカバリーに関連する概念は欧米における1960・70年代の脱施設化や当事者運動の中で徐々に育まれ、1980・90年代から主に米国で具体的に「リカバリー」という言葉で言及されはじめました6,7,8)。21世紀になってから欧米を中心に徐々に国際的な広まりをみせ、2010年代ではリカバリームーブメントとして精神障害者支援における世界的な潮流となっています4,6,7)

このように世界中の支援者/専門家に広まったリカバリーですが、「リカバリー」という言葉自体は非常に多義的です。そのため、最近ではリカバリーを「臨床的リカバリー」と「パーソナル・リカバリー」という区分でわけて整理しています(図1)4,5,9)。特に後者の「パーソナル・リカバリー」については、個人の主観的な人生観なども入っており、単純な症状や機能の回復だけでは達成されない側面が含まれています(図2,3)2,4,5,9)。一方で、最近の研究では、「パーソナル・リカバリー」と「臨床的リカバリー」との一定の相関関係についても指摘されており10)、両者が全く別物というものでもなく、実際の生活の中ではある程度相互に関連しているものと考えられています(図3)。




  1. President’s New Freedom Commission on Mental Health:Achieving the promise: transforming mental health care in America-Executive summary of final report (Rep. No. DMS-03-3831). Department of Health and Human Services, Rockville, 2003.
  2. Leamy M, Bird V, Le Boutillier C, et al: Conceptual framework for personal recovery in mental health:systematic review and narrative synthesis. Br J Psychiatry 199:445-452, 2011.
  3. Repper J, Perkins R: Recovery and social inclusion. Callaghan P, Playle J, Cooper L (eds): Mental health nursing skills, Oxford University Press, Oxford, pp85-95, 2009.
  4. Thornicroft G, Slade M:New trends in assessing the outcomes of mental health interventions. World Psychiatry 13:118-124, 2014.
  5. 山口創生, 松長麻美, 堀尾奈都記: 重度精神疾患におけるパーソナル・リカバリーに関連する長期アウトカムとは何か?. 精神保健研究 62:15-20, 2016.
  6. Ostrow L, Adams N: Recovery in the USA: from politics to peer support. Int Rev Psychiatry 24:70-78, 2012.
  7. Craig TJ: Social care: an essential aspect of mental health rehabilitation services. Epidemiol Psychiatr Sci, 2018. doi: 10.1017/S204579601800029X
  8. Anthony WA:Recovery from mental illness: the guiding vision of the mental health service system in the 1990s. Psychosoc Rehabil J 16:11-23, 1993.
  9. Slade M, Amering M, Oades L: Recovery: an international perspective. Epidemiol Psichiatr Soc 17:128-137, 2008.
  10. Van Eck RM, Burger TJ, Vellinga A, et al: The relationship between clinical and personal recovery in patients with schizophrenia spectrum disorders: a systematic review and meta-analysis. Schizophr Bull 44:631-642, 2018.

[Last update 2018/11/9]

本ページの引用情報
〇文章全体, 図1および2
地域・司法精神医療研究部:リカバリー(Recovery):第3回改定版. 国立精神・神経医療研究センター, 小平, 2018. URL: https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/about/recovery.html
〇図3
彼谷哲志, 山口創生: 当事者から見たリカバリーのイメージ. 国立精神・神経医療研究センター, 小平, 2018. URL: https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiiki/about/recovery.html