ご挨拶

 知的・発達障害研究部のホームページにおいでいただき、ありがとうございます。

 当研究部は、知的能力障害、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症、協調運動症、トゥレット症などの神経発達症とそれに併存する精神疾患(うつ病、双極症、不安症、強迫症、統合失調症など)や、知的・発達障害あるいはその特性を併せ持つ遺伝子疾患(レット症候群、22q11.2欠失症候群など)の病態解明、治療方法の開発とその普及を担っております。

 知的・発達障害は、脳の働き方の相違により、認知や行動の偏りを生じ、家庭、学校・職場、日常生活に支障を来す状態であり、その支援ニードはライフステージ全般に及びます。また、知的・発達障害と精神疾患は病因・病態上の結びつきを持っていることが明らかになっているほか、知的・発達障害を持ちながら育ちゆくなかで、様々な心理的困難を抱え、二次的なメンタルヘルス不調を来すこともあります。そのため、知的・発達障害は、精神医学・精神保健と密接なつながりがあるといえますし、いまや精神疾患の理解において、当事者が生来持ち合わせている特性や、発達的視点に基づく精神病理学的理解は不可欠となっています。

 知的・発達障害への研究は、私たちが誰もが持ち合わせる多様性の解明と、多様性を持ち合わせる我々がこの社会で誰もが当たり前の幸せを享受できるためには何が必要かを問い続けるチャレンジといえます。当研究部では、認知神経科学、神経生理学、脳イメージング、ゲノム医学などの多様な治療法を用いて、知的・発達障害の病因・病態研究に挑むとともに、実験動物を用いたモデル動物開発、他方では、ペアレント・トレーニング、親子相互交流療法(PCIT)を含めたペアレンティング(養育)のコーチングといった心理社会的治療まで幅広く取り組み、知的・発達障害研究を牽引するとともに、当事者とその家族、社会にとって還元性の高い研究成果を得るべく取り組んでいます。

 当研究部では、児童精神医学、小児神経学、臨床心理学、認知神経科学、神経生理学、行動科学、実験心理学、生化学など、多様な専門性を有するプロフェッショナルが、自らの発想力を生かし、自由闊達な研究部の雰囲気のもと、一丸となって活動しています。当研究部のもうひとつの重要なミッションは、研究人材育成であり、常にひとりひとりの研究者のキャリアパスを念頭に置きつつ、国内外で活躍するネクストリーダーの育成に取り組んでいます。

 また、当研究部は、発達障害者支援研修、ならびに、ペアレントトレーニング実施や養成研修を実施し、前者ではかかりつけ医対応力向上研修で講師となる人材育成、後者では注意欠如・多動症のペアレントトレーニングを各自で実施する人材の育成に取り組んでいます。 当研究部への温かいご支援とご鞭撻をお願い申し上げます。

知的・発達障害研究部 部長 岡田 俊

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 知的・発達障害研究部

〒187-8553 東京都小平市小川東町4-1-1 TEL:042-341-2711(代表)