精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部の河村 葵リサーチフェローが、第26回睡眠研究奨励賞を受賞しました

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2021年10月1日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市、理事長:中込和幸)精神保健研究所(所長:金 吉晴)睡眠・覚醒障害研究部(部長:栗山 健一)の河村 葵(かわむら あおい)リサーチフェローが、2021年9月23日に第26回睡眠研究奨励賞を受賞しました。

写真/右より睡眠・覚醒障害研究部 河村 葵 リサーチフェロー、栗山 健一 部長、内海 智博 研究生、松井 健太郎 研究員、吉池 卓也 室長

受賞論文:
 Bright light exposure augments cognitive behavioral therapy for panic and posttraumatic stress disorders: a pilot randomized control trial
 (高照度光によるパニック障害・心的外傷後ストレス障害認知行動療法増強作用の検討)

研究概要:
 高照度光療法は、うつ病や概日リズム睡眠・覚醒障害に対し治療効果を有する一方で、パニック障害や心的外傷後ストレス障害 (posttraumatic stress disorders; PTSD)への有効性は明らかではありませんでした。高照度光には学習(記憶)を促す効果があることが示されています。パニック障害やPTSDは、恐怖記憶の過剰強化・消去不全が病態特性と考えられており、恐怖消去学習を主要な治療過程とする曝露型認知行動療法(EB-CBT)が有効です。本研究は、高照度光療法がEB-CBTの治療効果を増強する可能性を検討しました。
 14名のパニック障害またはPTSD患者を対象とした単盲検無作為化比較試験において、EB-CBT中に高照度光照射を受けた群と低照度光照射を受けた群の二群間で、治療前後の不安およびうつ症状の変化度を比較しました。不安とうつ症状の評価には、State-Trait Anxiety Index(STAI)とMontgomery–Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)を用いました。
 高照度光照射群の状態不安およびうつ症状の改善度は、低照度光照射群よりも有意に大きいことが明らかとなりました。また両群において、治療観察期間中に明らかな有害事象の発生は認めませんでした。
 高照度光療法は、パニック障害およびPTSD患者に対する曝露型認知行動療法を増強する、安全性の高い治療法であることが示唆されました。本知見をもとに、恐怖記憶の過剰強化・消去不全を共有する恐怖・不安関連疾患群において高照度光療法の臨床的有用性を広く検討する意義が示唆されます。

 本研究の概要はSleep and Biological Rhythms. volume 18, pages101–107 , 2020. (https://link.springer.com/article/10.1007/s41105-019-00248-7)に掲載されています。