うつ病患者に対するヴァーチャル・リアリティを活用した認知行動療法の臨床研究の開始

うつ病患者に対するヴァーチャル・リアリティを活用した認知行動療法の臨床研究の開始

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2022年12月7日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
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うつ病患者に対するヴァーチャル・リアリティを活用した
認知行動療法の臨床研究の開始

 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院は、うつ病患者に対するヴァーチャル・リアリティを活用した認知行動療法のフィジビリティ試験(特定臨床研究)を株式会社ジョリーグッドおよび帝人ファーマ株式会社と共同で実施します。 

 認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy, CBT)は、認知の偏りを修正し問題解決を手助けすることによって症状を改善する精神療法です。CBTの臨床的有用性は認められており、医師または看護師が実施する場合に保険が適用されますが、CBTを実施する際の医療従事者の時間的負荷が大きく、地域によりCBTを実施できる医療従事者の確保が難しいなど、CBTを提供する体制が整っていないため、現在、CBTを希望する患者への供給は十分ではありません。そのため、CBTの普及に向けて情報通信技術を活用した提供体制の整備が課題となっています。
 本臨床研究では、対面で実施されるCBTの一部をヴァーチャル・リアリティ(VR)で代替することによって、CBTの治療効果を有しながら医療従事者の介在時間を短縮することが可能かを評価します。研究で使用するVRを利用したシステム(以下、CBT-VR)は、株式会社ジョリーグッドと帝人ファーマ株式会社が共同開発した未承認の医療機器プログラムであり、今後、治験および薬事承認を目指して開発を進めていく予定です。
 CBT-VRは、うつ病に対する治療を目的としており、CBT-VRによって、うつ病治療の機会を拡充することで患者利益の向上が期待されます。

臨床研究について

本研究ではうつ病患者に対してVRを用いたCBTを行ない、CBT-VRが臨床現場にて使用可能かを確認するとともに、その有効性および安全性を検討します。

1.研究概要

 本研究は、単施設で実施する治療介入の単群、前後比較試験です。スクリーニング検査により適格性を満たした、うつ病患者に対し、原則、週1回の外来にてCBT-VRを16セッション実施します。ベースライン、8セッション終了時、16セッション終了または治療中止時の検査と各セッション時の検査および診療に要する時間の計測と、患者質問票によりCBT-VRの実行可能性を評価します。16セッション終了後または介入中止以降の追跡期間である6か月間は希望する被験者に対してCBT-VRの使用を継続し、3か月および6か月の追跡評価を実施します。

臨床研究の概要図

2.対象

主な選択基準 1) 大うつ病性障害と診断され、薬物療法によって改善しない方、あるいは薬物療法が適さない方 2) 18歳以上65歳以下の方 主な除外基準 1) 躁病エピソード、軽躁病エピソード、精神病エピソード、パーソナリティ障害、PTSD、アルコール・物質使用障害の併存や既往がある方 2) 強い希死念慮がある方 他にも、担当医師が診察や検査の結果から適格性を判断します。

3.研究実施期間

 2022年11月(jRCT公表日)から2024年9月まで(対象者登録期間は2023年3月まで)

用語解説

CBT-VR
 CBT-VRは、うつ病に対するCBTの支援を目的として新たに開発された未承認の医療機器プログラムです。CBT-VRでは、心理教育、目標設定、行動活性、問題解決、認知再構成、再発予防といったCBTの一連の流れをVRで体感しながらその技法を学ぶことで、感情喚起や認知の偏りの修正をサポートし、患者さんのQOLが向上することを期待しています。CBT-VRは、株式会社ジョリーグッドと帝人ファーマ株式会社の共同開発により、治験および薬事承認を目指しています。

VR使用中のイメージ写真

共同研究先

株式会社ジョリーグッド(所在地:東京都中央区日本橋富沢町10-13 代表者:上路 健介)
 ジョリーグッドは、高精度なVRソリューションと、VR空間のユーザー行動を解析するAIによる医療福祉向けサービスを開発するメディカルテクノロジーカンパニーです。VRやAIなどのテクノロジーにより、医療教育、障害者支援、精神疾患治療など、人の成長や社会復帰を加速し、医療の進化や人の生きがいを支えるサービスを様々な研究機関や企業と共に展開しています(https://jollygood.co.jp/)。

帝人ファーマ株式会社(所在地:東京都千代田区霞が関3-2-1 代表者:渡辺 一郎)
 帝人グループは、あらゆる年齢の人々の健康的で快適な生活を支える製品・サービスを提供することとしており、革新的な治療法の創出をめざしています。そのヘルスケア事業の中核を担う帝人ファーマは、これまで主軸としてきた医薬品事業および在宅医療事業に加えて、2019年より精神疾患の一つであるうつ病に対するrTMS(反復経頭蓋磁気刺激)装置を販売し、患者さんのQOL向上に取り組んでいます(https://www.teijin-pharma.co.jp/)。

研究助成

 本研究は、株式会社ジョリーグッドから研究費の助成を受けています。

お問い合わせ先

【臨床研究に関するお問い合わせ】
鬼頭 伸輔(きとう しんすけ)
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 精神診療部長・臨床心理部長(併任)
〒187 8501 東京都小平市小川東町 4-1-1
電話: 042-341-2711 (代表)
FAX: 042-344-6745
E-mail: kito(a)ncnp.go.jp

【報道に関するお問い合わせ】
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課広報室
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1 
電話:042-341-2711(代表) 
FAX:042-344-6745 
E-mail: ncnp-kouhou(a)ncnp.go.jp

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