デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-089/NCNP-02)の米国での第Ⅱ相試験治験計画合意に関するお知らせ

デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-089/NCNP-02)の米国での第Ⅱ相試験治験計画合意に関するお知らせ

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2023年4月14日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-089/NCNP-02)の
米国での第Ⅱ相試験治験計画合意に関するお知らせ

 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター(東京都小平市、理事長:中込和幸、以下、NCNP)は、日本新薬株式会社(本社:京都市南区、代表取締役社長:中井亨、以下、日本新薬)と共同で開発を進めてきたアンチセンス核酸医薬品であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下、DMD)治療薬(NS-089/NCNP-02)を用いた第Ⅱ相試験について、米国食品医薬品局(FDA)と治験計画の合意に至ったことをお知らせいたします。

 DMDは、筋肉細胞を支えるジストロフィンタンパク質の欠損が原因で、骨格筋、心筋、肺の筋力低下を引き起こす進行性の筋ジストロフィーです。DMDにはさまざまな遺伝子変異型があり、NS-089/NCNP-02の投与対象となるのは、エクソン44スキッピングにより治療可能な遺伝子変異が確認されたDMD患者さんです。

 NS-089/NCNP-02は、NCNPと日本新薬が共同で開発した世界初のエクソン44スキップ薬です。モルフォリノ核酸が本来有する高い安全性に加えて、特許出願技術である新規高活性配列探索法を用いて開発した配列連結型のモルフォリノ核酸製剤であり、高いエクソン・スキップ活性を有しています。これまでに得られた非臨床試験の結果からは、エクソン44スキップに応答する変異形式の DMD患者細胞における有効性が確認されております。また、NCNP病院と鹿児島大学病院で実施した医師主導治験の結果からは、平均15.79%のジストロフィンタンパク質の発現の回復が認められ、ノース・スター歩行能力評価スコアを含め、運動機能の維持又は改善傾向が示唆されており、本剤のDMDに対する治療効果が期待されています。

 米国での開発は、日本新薬の米国子会社NS Pharma,Inc.(本社:米国ニュージャージー州、社長:田中 次男)が実施する予定です。なお、日本国内においても、日本新薬は医師主導治験に参加した6名を対象とした継続投与試験を実施中です。

 NCNPは難病・希少疾患治療剤の開発に引き続き使命感を持って取り組んで参ります。

開発の背景

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の変異が原因で、筋の細胞膜からジストロフィンタンパク質が失われ、徐々に筋力低下が進む難病で、男児に発症します。「エクソン・スキップ治療」は、アンチセンス核酸と呼ばれる短いDNAの様な合成核酸を用いて、メッセンジャーRNA前駆体から成熟メッセンジャーRNAが作られる過程で、タンパク質に翻訳されるエクソン領域の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正する治療法です(イン・フレーム化といいます)。この結果、正常なジストロフィンに比べると、タンパク質の一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンが発現して筋機能の改善が期待できます。この治療でスキップの対象となるエクソンは患者の変異形式に応じて異なり、現在までに、本邦では、NCNPと日本新薬が共同で見出したNS-065/NCNP-01を有効成分としたエクソン53スキップ薬であるビルテプソ®点滴静注250mgが製造販売承認を取得しておりますが、エクソン53スキップ薬が適応にならない患者に対して、別のエクソンを標的とした薬剤の開発が喫緊の課題となっており、NS-089/NCNP-02はNS-065/NCNP-01に続く2番目の開発品目となります。

助成金

NS-089/NCNP-02の開発は、以下の助成を受けています。
・日本医療研究開発機構(AMED)研究費
2015~2017年度 難治性疾患実用化研究事業「新規配列連結型核酸医薬品を用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン・スキップ治療の実用化に関する研究」
2016~2020年度 臨床研究・治験推進研究事業「疾患登録システムの効果的活用に基づく筋ジストロフィーの医師主導治験、ならびに医薬品開発に資する臨床研究の実施」
2018年度 橋渡し研究戦略的推進プログラム「デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する新規配列連結型核酸医薬品の医師主導治験」
2019~2021年度 橋渡し研究戦略的推進プログラム「デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する新規配列連結型核酸医薬品の医師主導治験」

用語の説明

<デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)>
 DMDは、男児に発症する、もっとも頻度の高い遺伝性筋疾患で、ジストロフィンと呼ばれる筋肉の細胞の骨組みを作るタンパク質(ジストロフィンタンパク質)の遺伝子に変異が起こることで、正常なタンパク質が作れなくなり、筋力が低下してやがて死に至る重篤な疾患です。現在、その進行を遅らせる目的でステロイド剤による治療が行なわれていますが、それ以外に有力な治療法は存在せず、新たな治療法の開発が必要とされています。

<エクソン・スキップ治療>
 アンチセンス核酸と呼ばれる短い合成核酸(DNAの様なもの)を用いて、遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)のうち、タンパク質に翻訳される領域(エクソン)の一部を人為的に取り除く(スキップする)ことで、アミノ酸読み取り枠のずれを修正(これをイン・フレーム化といいます)する治療法です。正常なジストロフィンタンパク質に比べると、その一部が短縮するものの、機能を保ったジストロフィンタンパク質が発現し、筋機能の改善が期待できます。この治療の対象となるエクソンは、患者の変異形式に応じて異なり、NS-089/NCNP-02はエクソン44を対象としています。

エクソン・スキップ治療の概念図

エクソン・スキップ治療の概念図

最上段:健常者では、ジストロフィンのメッセンジャーRNA(mRNA)前駆体から、スプライシングを経て成熟mRNAが作られ、ジストロフィンタンパク質が翻訳されます。
中段:エクソン45を欠失した DMDでは、エクソン44とエクソン46が連結したmRNAができますが、アミノ酸の読み枠にずれが生じ、ジストロフィンは発現しません(アウト・オブ・フレーム変異)。
下段:エクソン45を欠失した DMDを対象に、本剤 NS-089/NCNP-02を用いてエクソン44スキップを誘導し、エクソン43とエクソン46が直接連結出来る様にすると、アミノ酸の読み枠のずれは解消し、やや短いが正常に機能するジストロフィンが発現します(イン・フレーム化)。

お問い合わせ先

≪研究に関すること≫
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 
神経研究所 遺伝子疾患治療研究部 部長
青木 吉嗣(あおき よしつぐ)
TEL: 042-341-2712(内線5221 or 2922)
E-mail: tsugu56(a)ncnp.go.jp

≪医師主導治験に関すること≫
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
トランスレーショナル・メディカルセンター長
小牧 宏文(こまき ひろふみ)
TEL: 042-341-2711(代表) or 2712(内線:3052)
E-mail: shigemori(a)ncnp.go.jp

≪報道に関すること≫
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 
総務課広報室
〒187-8551東京都小平市小川東町4-1-1
TEL: 042-341-2711 (代表) / FAX: 042-344-6745
E-mail: ncnp-kouhou(a)ncnp.go.jp

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