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思春期におけるメンタルヘルスの男女差 孤独感とやせ願望が多くを説明 ― 若者との共同研究 ―

プレスリリース
精神保健研究所

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2026年9月17日               
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
公益財団法人東京都医学総合研究所
国立大学法人東京大学 医学部附属病院
国立大学法人東京大学 国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構
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思春期におけるメンタルヘルスの男女差
孤独感とやせ願望が多くを説明
― 若者との共同研究 ―


 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部 成田瑞 室長、キングス・カレッジ・ロンドンGemma Knowles 講師、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センター 西田淳志 センター長、東京大学大学院医学系研究科 笠井清登 教授(同大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)主任研究者)らの国際的な研究グループは、東京都内の3,171人を12歳、14歳、16歳で追跡した「東京ティーンコホート」のデータを解析し、16歳時点では女子で抑うつ症状や希死念慮などのメンタル不調が男子より多いこと、そして14歳時点の孤独感と「もっとやせたい」という思い(やせ願望)が、この男女差を説明する可能性を示しました。
 本研究は、研究者だけで分析項目を決めるのではなく、若者とのワークショップや話し合いを通じて、女子のメンタル不調に関わり得る要因を共同で検討した点が特徴です。若者から挙げられた候補のうち、調査データで検証可能だった「孤独感」と「やせ願望」に着目し、因果媒介分析の手法を用いて検討しました。その結果、両要因を介する経路は、16歳時点の抑うつ症状にみられた性差の34.7%、現在の希死念慮にみられた性差の46.3%に相当しました。この知見は、思春期のメンタルヘルスを考えるうえで、本人の問題だけでなく、人間関係や外見に関する社会的・構造的な環境にも目を向ける重要性を示唆します。
 本研究成果は、国際学術誌『Nature Human Behaviour』に日本時間2026年9月15日18時にオンライン掲載されました。

研究の背景

 思春期には、抑うつ、不安、自傷、希死念慮などの「内在化問題」が増えることがあり、とりわけ女子でその割合が高いことが多くの国で報告されています。一方で、なぜこの性差が生じるのか、どのような変え得る要因がその差に関わるのかは十分に分かっていませんでした。また、若者自身の経験や視点は、これまでのメンタルヘルス研究で十分に反映されてこなかったという課題がありました。そこで本研究では、若者との共同研究(co-production)を行い、女子でメンタル不調が多い理由として若者が重要と考える要因を抽出しました。その過程で「孤独感」「やせ願望」が候補となり、今回の分析対象としました。

研究成果

 本研究では、東京ティーンコホートに参加した3,171人(女子1,487人、男子1,684人)のデータを用いました。12歳時点の背景因子を考慮し、14歳時点の孤独感とやせ願望、16歳時点の抑うつ症状、希死念慮、自傷、情緒症状、不安との関係を解析しました。解析にはparametric mediational g-formulaを用い、体格、身体活動、親・友人との関係、いじめ被害、インターネット利用、思春期発達、12歳時点の各メンタルヘルス指標など、多数の交絡因子を調整しました。
 16歳時点の抑うつ症状は女子15.9%、男子8.2%、希死念慮は女子29.8%、男子18.1%で、ほかの内在化問題も総じて女子で高い割合を示しました。14歳時点では、孤独感は女子13.2%、男子6.0%、やせ願望は女子41.4%、男子11.1%で、やはり女子で高い割合を示しました。媒介分析では、14歳時点の孤独感とやせ願望を介する経路が、16歳時点の抑うつ症状の性差の34.7%、現在の希死念慮の性差の46.3%、自傷の26.7%、情緒症状の23.5%、不安の7.7%に相当しました。さらに19種類の感度分析を行い、全体として主解析とおおむね整合する結果が得られました。
 
図1. 思春期女子のメンタル不調における孤独感・やせ願望の役割
図1. 思春期女子のメンタル不調における孤独感・やせ願望の役割
 

この研究が社会に与える影響

 本研究は、思春期女子でメンタル不調が多い背景の一部に、孤独感や外見に関するプレッシャーが関わっている可能性を示しました。若者との共同研究では、グループからの排除、安心して本音を話せる友人の少なさ、周囲に合わせ続ける負担、外見へのからかい、スマートフォンを通じた体型比較、女性はやせているべきだという社会的期待などが、当事者の視点から挙げられました。今後、学校・地域でのつながりを支える取り組みや、外見への有害なプレッシャーを減らす教育・メディア・政策上の対策を、若者自身の参加のもとで検討していくことが重要です。一方、東京の都市部を中心としたコホートであることから、他地域・他集団での再検証も必要です。

原著論文

論文名:Loneliness and desire for thinness explain sex differences in adolescent internalizing problems(孤独感とやせ願望が、思春期の内在化問題における性差を説明する)
著者名:Zui C. Narita, Gemma Knowles, Susan M. Sawyer, Syudo Yamasaki, Darío Moreno-Agostino, Jordan DeVylder, Junko Niimura, Naomi Nakajima, Satoshi Yamaguchi, Mariko Hosozawa, Miharu Nakanishi, Yutaka Sawai, Daiki Nagaoka, Ryo Sasaki, Rui Zhou, Naho Yamane, Jacqueline Cosse, Daniel Stanyon, Haruka Goto, Riki Tanaka, Akito Uno, Satoshi Usami, Shuntaro Ando, Mariko Hiraiwa-Hasegawa, Toshi A. Furukawa, Tomohiro Shinozaki, Kiyoto Kasai, Vikram Patel, Atsushi Nishida & the Bridging Divides Young Persons Advisory Group
発表雑誌:Nature Human Behaviour
DOI:https://doi.org/10.1038/s41562-026-02578-2

本研究の主な助成事業

 本研究は日本学術振興会(JP21H05171, JP21H05173, JP21H05174, JP23H03174, JP23H05472, JP24H00666, JP24H00917, JP24K16821, JP25K20564, JP25K00889)、科学技術振興機構(JPMJPF2105およびRISTEX JPMJRS24K1)、ウェルカムトラスト(304283/Z/23/Zおよび309118/Z/24/Z)、キングス・カレッジ・ロンドン ESRC Centre for Society and Mental Health(ES/S012567/1)の支援を受けて行われました。

 
>精神保健研究所
https://www.ncnp.go.jp/mental-health/index.php

>行動医学研究部
https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/

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■お問い合わせ先
≪研究に関すること≫
国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所 行動医学研究部 成田 瑞(なりた ずい)
TEL: 042-341-2711(代表)
E-mail: zuinarita(a)ncnp.go.jp

≪報道に関すること≫
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
総務課広報室
E-mail: kouhou(a)ncnp.go.jp

国立大学法人東京大学
医学部附属病院 パブリック・リレーションセンター
TEL: 03-5800-9188(直通) 
E-mail: pr(a)adm.h.u-tokyo.ac.jp

国際高等研究所 ニューロインテリジェンス国際研究機構(WPI-IRCN)
広報担当
E-mail: pr.ircn(a)gs.mail.u-tokyo.ac.jp

公益財団法人東京都医学総合研究所
事務局研究推進課 福田・大井
TEL:03-5316-3109

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