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精神疾患の診断別にメタボリックシンドロームの有病率を算出 ― 大規模医療レセプト・健診データを利用した横断研究 ―

プレスリリース
精神保健研究所

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2026年9月17日
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)
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精神疾患の診断別にメタボリックシンドロームの有病率を算出
― 大規模医療レセプト・健診データを利用した横断研究 ―


 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所公共精神健康医療研究部の黒田直明部長、深澤舞子客員研究員らの研究グループは、精神疾患の診断別にメタボリックシンドロームの有病率を算出し、何らかの精神疾患を持つ人は持たない人と比べ、有病率が高いこと、また有病率は診断によって異なり、特に有病率の高い診断群があることを明らかにしました。
 この研究成果は、2026年8月14日に国際学術誌『Psychiatry Research』に掲載されました。

ポイント

・ 統合失調症、双極性障害、うつ病を持つ人のメタボリックシンドロームの有病率は、40~64歳までのすべての年齢層において、精神疾患を持たない人と比べて高い
・ これらの疾患に加え、男性では、器質性精神障害、心的外傷後ストレス障害を持つ人で、特にメタボリックシンドロームの有病率が高い
・ 女性では、器質性精神障害、知的障害、発達障害を持つ人で、特にメタボリックシンドロームの有病率が高い
 
図1.メタボリックシンドローム有病率
図1.メタボリックシンドローム有病率
 

研究の背景

 精神疾患を持つ人は持たない人と比べ、15年ほど寿命が短く1)、その原因には身体疾患の寄与が大きいことが知られています2)。なかでも循環器疾患による死亡が大きな割合を占めており2)、循環器疾患の発症を予測するメタボリックシンドロームの状況を把握することは重要です。
 統合失調症、双極性障害、うつ病を持つ人でメタボリックシンドロームのリスクが高いことは知られていましたが、年齢による違いは十分に検討されていませんでした。
 その他の精神疾患については、心的外傷後ストレス障害など、一部の疾患でメタボリックシンドロームのリスクの上昇が報告されていましたが、精神疾患を持たない人との比較は十分になされていませんでした。
 知的障害、発達障害を持つ人のメタボリックシンドロームのリスクについては、ほとんど注目されていませんでした。

〈参考文献〉
1) Chan, J.K.N., Correll, C.U., Wong, C.S.M., Chu, R.S.T., Fung, V.S.C., Wong, G.H.S., Lei, J.H.C., Chang, W.C., 2023. Life expectancy and years of potential life lost in people with mental disorders: a systematic review and meta-analysis. EClinicalMedicine. 65, 102294. 
2) Moneta, M.V., Haro, J.M., Plana-Ripoll, O., Olaya, B., 2025. Life expectancy associated with specific mental disorders and the contribution of causes of death: a population-based study in the region of Catalonia. Psychiatry Res. 348, 116480.

臨床的意義

 統合失調症、双極性障害、うつ病、心的外傷後ストレス障害に加え、女性では知的障害や発達障害を持つ人でもメタボリックシンドロームの有病率が高いことが示されました。これらの精神疾患を持つ人の支援にあたっては、メタボリックシンドロームにも注意し、必要に応じて早期に介入することで、生活習慣病を予防できる可能性があります。

■研究の内容
 本研究では、医療レセプト情報から同定した、40~64歳までの精神疾患を持つ198,692名、および、精神疾患を持たない4,341,521名を対象とし、性別、診断グループ別に、特定健康診査データを用いてメタボリックシンドロームの有病率を算出しました。分析の結果、メタボリックシンドロームの有病率は精神疾患の有無に関わらず、男女ともに年齢とともに上昇するが、男女ともに、全ての年齢層において、何らかの精神疾患を持つ人は持たない人よりも有病率が高いことが明らかになりました。患者数の多い統合失調症、双極性障害、うつ病については、診断別の分析でも同様の結果を得ました。
 年齢を調整したメタボリックシンドロームの有病率は、男性では何らかの精神疾患を持つ人で24.8%、持たない人で20.3%、女性では何らかの精神疾患を持つ人で7.8%、持たない人で4.6%でした(図2)。統合失調症、双極性障害、うつ病以外の精神疾患について、年齢を調整したメタボリックシンドロームの有病率を診断別に算出したところ、器質性精神障害を持つ人、また男性では特に心的外傷後ストレス障害を持つ人、女性では特に知的障害や発達障害を持つ人で、精神疾患を持たない人と比べて、有病率が高いことが明らかになりました。
 メタボリックシンドロームに関連したリスク要因(肥満、腹部肥満、血圧値、空腹時血糖値、HbA1c値、中性脂肪値の上昇、HDLコレステロール値の低下)についても、同様に、精神疾患を持つ人と持たない人で比較したところ、血圧値の上昇以外の全ての要因について、精神疾患を持つ人ではリスク保有者が多いことがわかりました。
 
図2.年齢調整済メタボリックシンドローム有病率
図2.年齢調整済メタボリックシンドローム有病率

<メタボリックシンドロームの定義>
腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上であり、かつ、血圧、血糖、脂質の3つのうち2つ以上が下記の基準を満たす場合、メタボリックシンドロームに該当するものとした。血圧の基準は、収縮期血圧値130mmHg以上または拡張期血圧値85mmHg以上、血糖の基準は、空腹時血糖値110mg/dl以上、脂質の基準は、中性脂肪値150mg/dl以上またはHDLコレステロール値40mg/dl未満。また質問票にて、血圧を下げる薬、インスリン注射または血糖を下げる薬、コレステロールを下げる薬を使用しているとの回答があった場合、それぞれの基準を満たすものとして扱った。
(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html

今後の展望

 本研究で示された、精神疾患を持つ人におけるメタボリックシンドロームの有病率の高さは、精神疾患を持つ人では、身体疾患のリスクもまた高いことを示しています。しかしながら、精神疾患を持つ人では、身体疾患の適切な治療が受けにくいことや、予防のためのサービスも利用しにくいことが報告されています3,4)
 今後もわれわれの研究グループでは、身体疾患の予防や治療状況をふくむ精神疾患を持つ人への医療サービスを評価する研究を進め、研究成果を医療計画や地域医療構想等の医療提供体制に関する施策につなげる活動を行なっていきます。

〈参考文献〉
3) Mitchell, A.J., Malone, D., Doebbeling, C.C., 2009. Quality of medical care for people with and without comorbid mental illness and substance misuse: systematic review of comparative studies. Br. J. Psychiatry. 194, 491–499. 
4) Lord, O., Malone, D., Mitchell, A.J., 2010. Receipt of preventive medical care and medical screening for patients with mental illness: a comparative analysis. Gen. Hosp. Psychiatry. 32, 519–543.

論文情報

論文名:Prevalence of metabolic syndrome among people with psychiatric disorders in Japan: A cross-sectional study using nationwide health insurance claims and health check-up data
掲載誌:Psychiatry Research
著者:深澤舞子、臼田謙太郎、片岡真由美、黒田直明
DOI: 10.1016/j.psychres.2026.117392

特記事項

 本研究は、JMDC Claims Databaseを用いて実施されました。JMDC Claims Databaseは株式会社JMDCが、複数の健康保険組合より提供された医療レセプト(入院、外来、調剤)および健診データを蓄積している疫学レセプトデータベースで、日本国内の多くの研究で利用されています。(https://www.jmdc.co.jp/jmdc-claims-database/

 
>精神保健研究所
https://www.ncnp.go.jp/mental-health/index.php

>公共精神健康医療研究部
https://www.ncnp.go.jp/nimh/pmh/
 

お問い合わせ

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【研究に関すること】
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 公共精神健康医療研究部
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TEL:042-341-2712
E-mail:nkuroda(a)ncnp.go.jp

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国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 総務課広報室
E-mail:kouhou(a)ncnp.go.jp

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