ADHDと肥満・糖尿病をつなぐ新たな生物学的関連を発見
~ADHDの病態にアディポネクチンが関与~
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)知的・発達障害研究部の高橋長秀部長、浜松医科大学子どものこころの発達研究センター 土屋賢治特任教授(兼大阪大学連合小児発達学研究科 特任教授(常勤))らの研究グループは、出生時の臍帯血中アディポネクチン濃度が低い子どもほど、その後のADHD(注意欠如・多動症)症状が強くなることを明らかにしました。
アディポネクチンは、血管修復作用や脂肪燃焼作用、血糖調整作用があり、糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームの予防に寄与するとされています。
さらに、国際的な大規模ゲノムデータを用いた解析により、ADHDとアディポネクチン濃度は遺伝的背景を共有しており、ADHDの発症に関連する遺伝的な変化を有するとアディポネクチン濃度が低くなることが示されました。また、アディポネクチンの低下は出生時の炎症マーカーの上昇とも関連していました。
本研究は、ADHDと肥満・糖尿病・心血管疾患などの身体疾患との関連を説明する新たな生物学的経路を示したものです。
この研究成果は、児童精神医学分野の国際学術誌「European Child & Adolescent Psychiatry」 に2026年7月14日に掲載されました。
アディポネクチンは、血管修復作用や脂肪燃焼作用、血糖調整作用があり、糖尿病や高血圧、メタボリックシンドロームの予防に寄与するとされています。
さらに、国際的な大規模ゲノムデータを用いた解析により、ADHDとアディポネクチン濃度は遺伝的背景を共有しており、ADHDの発症に関連する遺伝的な変化を有するとアディポネクチン濃度が低くなることが示されました。また、アディポネクチンの低下は出生時の炎症マーカーの上昇とも関連していました。
本研究は、ADHDと肥満・糖尿病・心血管疾患などの身体疾患との関連を説明する新たな生物学的経路を示したものです。
この研究成果は、児童精神医学分野の国際学術誌「European Child & Adolescent Psychiatry」 に2026年7月14日に掲載されました。
ポイント
• 肥満・糖尿病の発症を抑制するホルモンであるアディポネクチンが出生時(臍帯血)に低い子どもほど、その後のADHD症状が強いことを明らかにした• 国際的な大規模ゲノムデータを用いてADHDと血中のアディポネクチン濃度は遺伝的に関連しており、ADHDに関連する遺伝的な変化を有するとアディポネクチン濃度が低くなる傾向を示した
• ADHDで肥満や糖尿病などの代謝疾患が多い理由の一端を説明する新たな生物学的メカニズムである可能性がある

研究の背景
ADHDは小児の約5%にみられる神経発達症であり*1、不注意、多動・衝動性を特徴とします。近年、ADHDのある人では、肥満や2型糖尿病、心血管疾患などの身体疾患を合併しやすく、肥満は約1.2~1.6倍、2型糖尿病や心血管疾患は約2倍多いことが報告*2されています。しかし、なぜADHDと代謝異常が関連するのかについては十分に解明されていません。アディポネクチンは脂肪組織から分泌されるホルモンであり、炎症を抑制し、インスリン感受性を高める働きを持っています。肥満や糖尿病ではアディポネクチン濃度が低下することが知られていますが、ADHDとの関連については十分な検討が行われていませんでした。
*1 American Psychiatric Association (2022): Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: DSM-5-TR. 5th Edition, Text Revision ER ed. Washington, DC: American Psychiatric Publishing
*2 Cortese, Am. J Psychiatry. 2016; Li,JCPP Adv.2023; Garcia-Argibay, Neurosci Biobehav Rev. 2023
研究の概要
本研究では、浜松母と子の出生コホート(HBC Study)に参加した531組の母子を対象として解析を行いました。出生時の臍帯血中アディポネクチン濃度を測定し、その後のADHD症状との関連を検討したところ、出生時のアディポネクチン濃度が低いほど 6〜7歳および8〜9歳時点のADHD症状が強いことが明らかになりました。さらに、症状の経時的変化を解析したところ、出生時アディポネクチンが低い子どもは年齢とともにADHD症状が増悪する群に属しやすいことが示されました。加えて、国際共同研究によるADHD(55,374人)とアディポネクチン(46,434人)のゲノム解析データを検討することで、以下のことが明らかになりました。
• ADHDとアディポネクチン濃度には強い遺伝的相関が存在する
• ADHDの発症リスクを高める遺伝子の変化を多く有するほどアディポネクチン濃度が低くなりやすい
また、アディポネクチン濃度は炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β)や炎症指標であるCRPと関連することも確認されました。
臨床的意義
本研究には以下の3つの意義があります。1. ADHDと身体疾患をつなぐ生物学的基盤を示した
ADHDでは肥満や糖尿病、脂質異常症などの身体疾患が多いことが知られていますが、その理由は十分に明らかではありませんでした。本研究は、代謝を調節するホルモンであるアディポネクチンがADHDと関連することを示し、神経発達症と身体疾患をつなぐ生物学的基盤の一端を明らかにしました。
2. ADHDの炎症仮説を支持する結果
アディポネクチンには炎症を抑制する作用があることが知られています。本研究では、アディポネクチン低下が出生時の炎症マーカー上昇と関連していました。近年注目されている「ADHDの炎症仮説」を支持する結果であり、炎症と代謝異常が相互に関連しながらADHDの病態に関与している可能性が示されました。
3. ADHD治療と身体健康の両立につながる可能性
ADHD治療薬(メチルフェニデートなど)には、アディポネクチン濃度を高める作用がある可能性が報告されています。また、運動や睡眠改善、メラトニン投与もアディポネクチンを増加させることが知られています。今回の結果は、ADHDの適切な治療や生活習慣への介入が、症状改善だけでなく、将来的な肥満や糖尿病などの身体疾患の予防にもつながる可能性を示唆するものです。
今後の展望
本研究は、ADHDを単なる行動上の問題ではなく、代謝・炎症システムとも関連する全身性の神経発達症として理解する重要性を示しています。今後は、次について研究を進める予定です。・ 出生コホートと動物モデルを用いた、アディポネクチンのADHD病態生理における役割の解明
・ アディポネクチンのADHD症状および肥満・糖尿病などの身体合併症に対するバイオマーカーとしての有用性の検討
・ アディポネクチンを標的とした新たな予防・治療法の開発
原著論文情報
論文名:Involvement of adiponectin in the biology of attention deficit hyperactivity disorder掲載誌:European Child and Adolescent Psychiatry
著者:Nagahide Takahashi, Toshiki Iwabuchi, Tomoko Nishimura, Akemi Okumura, Taeko Harada, Md Shafiur Rahman, Kenji J Tsuchiya
DOI: 10.1007/s00787-026-03114-3
助成金
本研究は文部科学省科学研究費助成事業(25K10877, 研究代表者:髙橋長秀)による助成により行われました。>精神保健研究所
https://www.ncnp.go.jp/mental-health/index.php
>知的・発達障害研究部
https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiteki/




