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指定難病・縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの治療薬 「アセノベル🄬徐放錠500mg」の 長期投与における安全性と有効性を確認

プレスリリース
神経研究所

東北大学、NCNP、名古屋大学、大阪大学、国際医療福祉大学のロゴマーク




2024年6月10日
    
国立大学法人東北大学
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学
国立大学法人大阪大学
学校法人国際医療福祉大学
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指定難病・縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの治療薬
「アセノベル🄬徐放錠500mg」の
長期投与における安全性と有効性を確認

 

 

発表のポイント

  • 東北大学病院は、遠位型ミオパチー(注1)の一種である縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)(注2)を対象とした治療薬の臨床試験を実施してきました。
  • 48週の二重盲検期を終えた19例の患者に対して、72週間にわたってアセノベル®徐放錠(注3)を継続投与し、安全性と有効性を確認しました。
  • 本研究およびその後の有効性確認試験の結果により、ノーベルファーマ株式会社が2024年3月に製造販売承認を取得しました。今回の結果によりGNEミオパチー患者への長期投与の安全性が担保されました。

 

研究概要

 遠位型ミオパチーの一種であるGNEミオパチーは、体幹から離れた部位から筋肉が萎縮、変性し次第に体の自由が奪われていく希少疾病で、指定難病の一つです。我が国の患者数は400名程度と推定され、その多くが10代後半から30代にかけて発症しています。
 東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授らのグループは、2010年から医師主導治験として第Ⅰ相試験、第II/III相試験、ノーベルファーマ株式会社が治験依頼者となる有効性確認試験を実施し、GNEミオパチーを対象としたウルトラオーファンドラッグ(注4)であるアセノベル®徐放錠500mgの治療効果を明らかにしました。今回の研究では48週の二重盲検期を終えた19例の患者に対して、72週間にわたってアセノベル®徐放錠を継続投与し、安全性と有効性を確認しました。これらの結果をもとにノーベルファーマ株式会社が2024年3月26日に正式な製造販売承認を取得しました。今後は製造販売後調査によりリアルワールドでの効果検証が必要で、長期投与での安全性が担保されていることは重要な知見です。
 本研究成果は、2024年6月5日にJournal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry誌にオンラインで掲載されました。

詳細な説明

 遠位型ミオパチーの一種であるGNEミオパチーは、体幹から離れた部位から筋肉が萎縮、変性し次第に体の自由が奪われていく有効な治療法のない希少疾病であり、指定難病の一つに数えられています。我が国の患者数は400名程度と推定され、その多くが10代後半から30代にかけて発症しています。
 本疾患は1980年代に埜中ら・水澤らにより世界に先駆けて臨床病型が報告されました。2001年に、その原因遺伝子GNEから合成される蛋白がシアル酸代謝に関わる酵素であることが見いだされ、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第一部、西野一三部長らによりモデルマウスにてシアル酸補充療法の予防効果が示されました。
 これを受けて東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志(あおき まさし)教授らのグループは、2010~2011年に、世界で初めて医師主導治験として第Ⅰ相試験を実施し、その後、医師主導第Ⅰ相試験(追加)を行い、シアル酸の一種であるアセノイラミン酸のファースト・イン・ヒューマンの検討を通して、安全性を確立しました。
 さらに日本医療研究開発機構の難治性疾患実用化研究事業として実施した医師主導第II/III相試験、ノーベルファーマ株式会社が治験依頼者となる有効性確認試験を実施しGNEミオパチーにおけるアセノイラミン酸の効果を明らかにしました(図1)。第II/III相試験のアセノベル投与群では上肢筋力合計点数の低下を長期間にわたり軽減することが明らかとなりました。これらの臨床試験は、国立精神・神経医療研究センター病院(研究分担者:森 まどか医長)、名古屋大学医学部附属病院(研究分担者:勝野 雅央教授)、大阪大学大学院医学系研究科(研究分担者:髙橋 正紀教授)、熊本大学病院(研究分担者:山下 賢教授、現・国際医療福祉大学成田病院)、東北大学病院臨床研究推進センター(CRIETO)および岐阜大学先端医療・臨床研究推進センター(浅田 隆太准教授)と連携した成果となります。
 これらの結果をもとにノーベルファーマ株式会社が薬事承認申請を行い、2024年2月29日に厚生労働省医薬品第一部会において製造販売承認が了承され、同年3月26日に正式な製造販売承認を取得しました。開発がきわめて困難といわれているウルトラオーファンの疾患であるGNEミオパチーに対する治療開発の世界初の成功例となり、世界に先駆けた成果として注目されています。
 今回の研究では医師主導第II/III相試験48週の二重盲検期を終えた19例の患者に対して、72週間にわたってアセノベル®徐放錠を継続投与し、安全性と有効性を確認しました。今後は製造販売後調査によりリアルワールドでの効果を検証していくことが大事となるため、長期投与での安全性が担保されていることは重要な知見であると考えます。今回の結果によりGNEミオパチー患者への長期投与の安全性が担保されました。

図1. 第II/III相試験のアセノベル投与群では上肢筋力合計点数の低下が長期に軽減しているグラフ
図1.
第II/III相試験のアセノベル投与群では上肢筋力合計点数の低下が長期に軽減。

謝辞

本研究は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、文部科学省橋渡し研究加速ネットワークプログラム、厚生労働科学研究費補助金および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業の助成を得て遂行しました。また治験薬はノーベルファーマ株式会社より提供を受けました。

用語説明

注1. 遠位型ミオパチー:遺伝的な筋肉の病気(筋疾患)の一つです。理由は不明ですが、筋疾患の多くは、体幹に近い筋(近位筋)から障害されます。ところがこの遠位型ミオパチーは、体幹から遠い筋(遠位筋)、例えば足首を動かすような筋肉や指先を動かすような筋肉から障害されます。そのような遺伝性筋疾患を総称して、遠位型ミオパチーと呼んでいます。
注2.    縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー):遠位型ミオパチーの一つで1980年代の日本からの臨床報告が疾患概念確立の端緒となりました。GNE遺伝子はシアル酸という糖の一種を身体の中で合成するのに必要な酵素の設計図です。患者はこの酵素の機能が低下していて、シアル酸が出来にくくなっています。
注3.    アセノベル®徐放錠500mg:一般名はアセノイラミン酸で、シアル酸の一種です。GNEミオパチーで足りなくなったシアル酸を補うため経口投与可能な薬剤として開発されました。
注4.    ウルトラオーファンドラッグ:オーファンドラッグは対象患者数が本邦において5万人未満、医療上特にその必要性が高いものなどの条件を満たし、厚生労働大臣が指定した医薬品です。対象患者数が1,000人未満の疾患は、さらに医薬品の開発が困難であり、ウルトラオーファンドラッグと呼ばれています。

論文情報

タイトル:Safety and Efficacy of Aceneuramic Acid in GNE Myopathy:
Open-Label Extension Study
著者:Suzuki N, Mori-Yoshimura M, Katsuno M, Takahashi MP, Yamashita S, Oya Y, Hashizume A, Yamada S, Nakamori M, Izumi R, Kato M, Warita H, Tateyama M, Kuroda H, Asada R, Yamaguchi T, Nishino I, Aoki M*
(鈴木直輝、森まどか、勝野雅央、髙橋正紀、山下賢、大矢寧、橋詰淳、山田晋一郎、中森雅之、井泉瑠美子、加藤昌昭、割田仁、竪山真規、黒田宙、浅田隆太、山口拓洋、西野一三、青木正志)
*責任著者:東北大学⼤学院医学系研究科神経内科学分野 教授 青木正志

掲載誌:Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry
DOI: 10.1136/jnnp-2024-333853
 

関連リンク

プレスリリース(2024/03/27)指定難病・縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーの治療薬「アセノベル🄬徐放錠 500mg」の長期投与における安全性と有効性を確認
https://www.ncnp.go.jp/topics/detail.php?@uid=ag33w5KQgQS0evwZ

神経研究所
https://www.ncnp.go.jp/neuroscience/index.php

疾病研究第一部
https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/index.html

NCNP病院
https://www.ncnp.go.jp/hospital/

お問い合わせ

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科神経内科学分野
教授 青木 正志(あおき まさし)
東北大学大学院医学系研究科臨床障害学分野
講師 鈴木 直輝(すずき なおき)
TEL: 022-717-7189
Email: naoki.suzuki.e3(a)tohoku.ac.jp

(取材に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
FAX: 022-717-8931
Email: press(a)pr.med.tohoku.ac.jp

国立精神・神経医療研究センター広報室
TEL: 042-341-2711(代表)
FAX: 042-344-6745
Email:ncnp-kouhou(a)ncnp.go.jp

名古屋大学医学部・医学系研究科 総務課総務係
TEL: 052-744-2804
Email: iga-sous(a)t.mail.nagoya-u.ac.jp

大阪大学医学系研究科保健学事務室庶務係
TEL: 06-6879-2504
Email: i-hoken-syomu(a)office.osaka-u.ac.jp

国際医療福祉大学成田病院 総務広報課
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