2024年7月1日
国立精神・神経医療研究センター
統合失調症に関する世界規模の政策提言書を発信
取組みの概要
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市) 精神保健研究所 児童・予防精神医学研究部 住吉太幹 部長が、統合失調症に関する世界各国への政策提言書*を共著者として発刊しました。同提言書には統合失調症の病態生理の理解および治療法の進歩、求められる支援の方略などが、欧州、北米、アジアの専門家により解説されています。
*研究業績(政策提言書)
「Schizophrenia – Time to Commit to Policy Change; Updated Report 2024, Oxford Health Policy Forum CIC.」
https://www.oxfordhealthpolicyforum.org/our-work/schizophrenia-time-to-commit-to-policy-change-2024-report/
「Schizophrenia – Time to Commit to Policy Change; Updated Report 2024, Oxford Health Policy Forum CIC.」
https://www.oxfordhealthpolicyforum.org/our-work/schizophrenia-time-to-commit-to-policy-change-2024-report/
取組みの意義
統合失調症は、思考の障害(妄想など)、知覚の異常(幻聴など)、不適切な感情の表出、および認知機能(記憶、計画性、注意力など)の低下で特徴づけられる代表的な精神疾患です。世界で2千4百万人以上が直接的な影響を受けており、平均寿命を15-20年間ほど短縮させるなど、患者個人や社会に大きな負担が強いられています。
こうした中、これまで難治とされてきた陰性症状(感情の平板化、意欲の減退など)や認知機能障害を軽減する医薬品・医療機器、およびリカバリー促進や再発予防に向けた心理社会的治療法の開発や社会実装が進められています。併せて、患者の就労促進や家族など支援者の負担軽減へのさらなる施策が求められます。
以上のように統合失調症克服への意識が高まりつつある一方、人的・経済的資源の不足や地域的格差が、先進国を含めた世界的な課題として存在します。このような現況のもと、欧州(英国、イタリア、ドイツ、ベルギー、デンマーク、リトアニア)、北米(米国)、アジア(日本)の専門家13名が作成した今回の政策提言書には、治療の適正化、医療・福祉従事者の養成、支援者のケア、患者のエンパワーメント(スティグマ対応など)に関する要望がまとめられています。
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