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アルツハイマー病新薬の 「全国臨床レジストリ」研究がスタート

神経研究所
神経研究所、病院 臨床研究・教育研修部門(CREP)

神経研究所と病院 臨床研究・教育研修部門(Clinical Research & Education Promotion Division:CREP)が連携して「アルツハイマー病疾患修飾薬レジストリ研究チーム」を立ち上げました。実用化されたアルツハイマー病治療薬の安全な運用を図るとともに、データの集積・解析の役割を果たします。

安全に治療を行うための調査・研究体制を構築

 わが国でアルツハイマー病(AD)に悩む方の数は数百万人にのぼります。ADの病態メカニズムそのものを標的とする薬(疾患修飾薬)の開発が進み、脳に溜まってADの原因となるタンパク質「アミロイドβ」に対する抗体療法が実用化されました。本邦でも2023年12月より「レケンビ(一般名:レカネマブ)」が発売され、NCNP病院でも本剤を使っての治療を開始しました。この薬では、一部の患者さんに脳の浮腫(むくみ)や小出血などの副作用(ARIAと呼ばれます)が生じる可能性があり、これを予測し、安全に治療を行うことが求められています。ARIA のリスクは、APOEという遺伝子の型から推定が可能で、ε4型のAPOE遺伝子を2つ持つ場合(抗体薬の適応となる患者さんの1割程度と予測されます)に、リスクが高まることがわかっています。しかし、APOE遺伝子型の検査は現時点(※本稿初出2024年当時)ではまだ公的医療保険の適用外です。検査が保険適用となるまでの期間、患者さんの安全を確保するために、抗体薬で治療されるすべての患者さんから安全性や効能の情報を収集する「製造販売後調査」を製薬企業が行い、並行して、私たち研究者がAPOE 遺伝子検査やバイオマーカー研究を担当し、共同で患者さんの情報を登録、解析する「全国臨床レジストリ」研究を行うことになりました。
 
  
図1: アルツハイマー病治療薬のARIA発現率とAPOE遺伝子の関係
(APOE遺伝学的検査結果補足資料より引用)

レジストリ研究の実績を生かして

 この取り組みはAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)研究「アルツハイマー病疾患修飾薬全国臨床レジストリの構築と解析」として採択され、NCNP が代表機関となり研究を行うことになりました。当センターでは筋ジストロフィーなど難病患者さんのレジストリ研究を全国レベルで行ってきました。この経験をADのような、より頻度の高い疾患に応用します。レカネマブの開発に携わった神経研究所長が代表を務め、筋疾患のレジストリ研究を主導してきた病院 臨床研究・教育研修部門(CREP) の臨床研究支援部長、データ解析の専門家である生物統計解析室長、医療倫理を専門とする研究員が加わり、NCNP の研究チームが結成されました。東京大学、新潟大学、東京都健康長寿医療センターなど14機関20名の研究者が全国の研究を支えます。さらに、NCNPの認知症研究に携わる「精神・神経疾患研究開発費」班のメンバーも緊密に連携します。このようにオールNCNP、オールジャパンの体制で、全国数百カ所に及ぶ医療機関の協力を得て、早期ADの治療を受ける数万人規模の患者さんのデータを円滑に収集することが目標です。そして、APOE遺伝子などの、治療に必要な情報を患者さん・主治医と正確に共有することで、安全で有効なAD治療の実現のために力を注ぎます。
 

図2: 全国の研究者による研究体制

リファレンス

1.日刊薬業 2024年5月8日「レケンビ、副作用予測の遺伝子情報検査へ
岩坪研究班「全国臨床レジストリ」

 
 
老人斑(緑矢印)とタウタンパク質からなる神経原線維変化(赤矢印)の顕微鏡画像
老人斑(緑矢印)とタウタンパク質からなる神経原線維変化(赤矢印)の顕微鏡画像
 
アルツハイマー病新薬全国臨床レジストリチーム
アルツハイマー病新薬全国臨床レジストリチーム
神経研究所/岩坪 威 所長(写真中央左)、病院/臨床研究支援部 中村 治雅 部長(中央右)、
病院/情報管理・解析部 大庭 真梨 室長 ( 写真左 )、病院/臨床研究支援部 有江 文栄 研究員(写真右)

リンク
神経研究所

AD-DMT全国臨床レジストリ


▼NCNP内連携組織リンク
疾病研究第四部
病院 認知症センター/認知症疾患医療センター
病院 放射線診療部
臨床研究・教育研修部門: CREP

 


記事初出
「Annual Report 2023-2024」(2024年12月発行)
>広報誌>Annual Report2023-2024