総合外科部(整形外科)と身体リハビリテーション部は連携して医療用パワードスーツ(ロボットスーツHAL®)による歩行運動治療を実施しています。新しい治療方法であるため効果を検証するための臨床研究も行っています。
外骨格型ロボットを使ったリハビリテーション
医療用パワードスーツである「ロボットスーツHAL®:Hybrid Assistive Limb®(以下HAL®)」は、日本の企業※が開発した外骨格型ロボットです。生体電位信号を読み取って装着した人の意図に沿った動きをすることができ、歩行運動などを助け、改善することができます。NCNP病院は、難治性の神経・筋疾患の治療実績のもと、2012年よりHAL® 両脚タイプによるサイバニクス治療効果検証治験「NCY-3001試験」に参加しました。治験の結果、HAL®は治療効果が認められ、2015年には医療機器として承認されました。翌2016年には運動単位が傷害される8つの神経・筋疾患(脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、Charcot-Marie-Tooth 病、筋ジストロフィー、遠位型ミオパチー、先天性ミオパチー、封入体筋炎)に対する「歩行運動処置」への公的医療保険の適用が承認され、2023年度には,新たに遺伝性痙性対麻痺とHTLV-1関連脊髄症が加わりました。治験の成果により、多くの患者さんに新しい治療法を届けることに寄与しました。
当院では、2023年度からHAL® 医療用両脚タイプによる診療を開始しています。
※CYBERDYNE株式会社
図1:2023年度のHAL®運用実績
HAL® の効果と今後の展望
HAL® の特徴は、人が運動を意図した際に生じる微弱な「生体電位信号」を感知し、意思どおりの動きを実行することです。HAL®を装着することで歩行に重要な股・膝関節のコントロールが容易になり、わずかな出力で大きな一歩を踏み出す事ができます(パワーアシスト)。 難病の患者さんはその疾患の症状として、本来の筋肉の使い方とは異なる歩き方(代償歩行)とならざるを得ません。一度異なる歩き方を覚えると、身体に使いすぎる部分と使わない部分が生じてしまい、望ましくない歩行が強化されてしまいます。HAL®はこの負の連鎖を断ち切り、本来の歩行に必要な体の動きを与えてくれます。正しく歩けたという事実を脳は感じ取り、更に歩行が容易になります(interactiveBioFeedback; iBF)。こうして繰り返し歩くことにより、最適な歩行運動を学習していきます(図2)。HAL®は両脚タイプの他に腰タイプ、上肢にも使用可能な単関節タイプがあり、歩行以外の運動学習も可能です。核酸医薬品などの開発により、神経・筋疾患の病態メカニズムに作用するような薬(疾患修飾薬)が登場し、運動機能の改善が期待できる時代になりました。薬物療法とHAL®トレーニングの併用による相乗効果が期待されます。
「巧みさとデクステリティ」の概念図に、HAL®のiBFの概念を追記した)
リファレンス
1.Nakajima.T, 2021, Cybernic treatment with wearable cyborg Hybrid Assistive Limb (HAL) improves ambulatory function in patients with slowly progressive rare neuromuscular diseases: a multicentre,randomised, controlled crossover trial for efficacy and safety (NCY-3001).Orfphanet J Rare Dis 2021:16:304
2.中島孝,2023,神経難病に対する装着型サイボーグを用いた運動機能の再生. Jpn j Rehabil Med 2023:vol60 No11:933-940
診療部紹介
総合外科部 整形外科
身体リハビリテーション部

↑HAL®診療チームのメンバー
▼NCNP内連携組織リンク
病院/脳神経内科診療部
病院/脳神経小児科診療部
記事初出
「Annual Report 2023-2024」(2024年12月発行)
>広報誌>Annual Report2023-2024
※職員の所属情報は2024年10月現在のものです。




