COVID-19流行下の、発達障害のある子どもと親のメンタルヘルス

COVID-19流行下の、発達障害のある子どもと親のメンタルヘルス

知的・発達障害研究部では、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、トゥレット症の病態解明、
これらの発達障害に合併する心の問題、
ペアレント・トレーニングや親子相互交流療法などの心理社会的治療の治療効果の実証と普及に取り組んでいます。

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精神保健研究所 知的・発達障害研究部

COVID-19流行下における
発達障害がある子どもと
親の生活の質

発達障害の子どもとその親のQOLの解説図
発達障害の子どもとその親のQOL

 発達障害のある子どもは、環境の変化に敏感であったり、対人関係や社会生活における心理的負荷によって、精神的な不調を伴うことが少なくありません。また、発達障害の子どもの情緒面や行動面の困難は、養育者の育児負担とも関連しています。知的・発達障害研究部では、認知神経科学に基づく病態解明とともに、発達障害のある子どもが社会生活のなかで直面する困難やメンタルヘルス上の問題、当事者家族が直面する困難とその援助に焦点を当てた研究を行っています。
 COVID-19感染症が世界中で流行し、人びとの生活スタイ ルは大きく変化しました。こうした社会情勢の中で、発達障害の子どもと養育者のメンタルヘルス悪化が懸念されました。
 知的・発達障害研究部では、2020年5月の緊急事態宣言発令中に、東京都八王子市の社会福祉法人日本心身障害児協会島田療育センターはちおうじ (小沢浩所長) と共同し、発達障害がある子どもとその養育者を対象にして、発達障害のある子どもの生活の質(以下:QOL) と情緒面・行動面での問題、親のQOLと不安・抑うつや育児ストレス、日常生活状況やCOVID-19により影響を受けた生活状況を評価しました。

生活の質の低下に関連する要因と
保護的役割を果たす要因

討議風景の写真
討議風景

 親と子どものQOLの低下は、COVID-19流行下においても母親が勤務状況を変えられなかったり、子どもの睡眠リズ ムが変化したときに認められました。そのような状況でも、親の抑うつや不安、育児ストレスが低かったり、子どもの不適応行動が少なかったりする場合には、親と子どものQOLは維持されやすいことが明らかになりました。この結果は、子どもに睡眠リズムの変化がみられるときには、子どもへのサポートを強化したり、睡眠リズムを改善する取り組みを行うこと、親の養育負担が増大するコロナ禍では、親が子どもに向き合う時間を持てるよう職場の柔軟な対応が求められること、子どもの行動上の問題が大きかったり、親が育児ストレスを抱えたり、メンタルヘルス悪化を伴っている場合には、生活を支える濃密なサポートが必要であることを示しています。
 私たちは現在、1年後のフォローアップ調査を実施中です。生活の質の改善の促進要因、阻害要因を明らかにし、メンタルヘルスケアの改善に有用な知見を得たいと考えています。


リファレンス

Ueda R, Okada T et al. The quality of life of children with neurodevelopmental disorders and their parents during the Coronavirus disease 19 emergency in Japan. Sci Rep. (2021) 11(1), 3042.

プレスリリース202110月26日「年新型コロナウイルス感染症感染拡大下における 発達障害児の生活の質低下に関連する精神状態を特定」
https://www.ncnp.go.jp/topics/2021/20211026p.html

プレスリリース2022年3月15日「新型コロナウイルス感染症拡大下で、 発達障害を持つ子どもと親の生活の質はどのように変化したか」
https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20220315p.html

研究部紹介

精神保健研究所 知的・発達障害研究部

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知的・発達障害研究部 岡田 俊 部長

【研究部ホームページリンク】
精神保健研究所 知的・発達障害研究部
https://www.ncnp.go.jp/nimh/chiteki/

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