筋疾患の病因・病態解明と治療法開発

筋疾患の病因・病態解明と治療法開発

疾病研究第一部は、
1) 筋疾患の病因・病態解明と治療法開発を目指した「研究」
2)「診断」サービス提供による筋疾患臨床の後方支援
3) 診断後の検体蓄積による「筋レポジトリー」構築
4) 専門家の少ない筋疾患学の「教育」提供
を柱として活動しています。

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神経研究所疾病研究第一部

筋疾患の病因・病態解析

皮膚筋炎患者筋の写真
皮膚筋炎患者筋でのMxA発現。正常筋(右) では全く発現がない

 筋疾患には、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、遠位型 ミオパチーなどの遺伝性のものから、筋炎などの非遺伝性のものまで幅広い種類があります。私たちはその病因と病態を明らかにして、治療法開発へと繋ぐことを目指しています。
 特に筋炎については、ここ20年ほどの間にその疾患概念が大きく変化してきました。例えば、皮膚筋炎という疾患は皮膚炎と筋炎をきたす疾患であると理解されていましたが、患者骨格筋内でI型インターフェロンが作用していることが明らかにされ、I型インターフェロン病であるとの理解に変わりつつあります。私たちはI型インターフェロンが作用した際に発現するMxAが患者筋で発現していれば、皮膚筋炎と診断できることを明らかにしました。この発見により、皮膚症状のない皮膚筋炎が存在すること、また皮膚症状のない皮膚筋炎は抗 NXP-2という抗体と強く関連していること、さらには、陽性自己抗体によって筋病理所見の特徴が異なることが明らかになりました。

筋疾患の診断・レポジトリー・教育活動

教育ビデオ公開サイトにアクセスがあった国々の地図
教育ビデオ公開サイトにアクセスがあった国々 (2018年1月1日~2021年5月31日)

 筋疾患は全世界的に患者数が少ないため専門家もあまり多くありません。筋疾患の診断には、患者さんの筋肉を一部採して顕微鏡下で調べる筋病理診断や、遺伝子解析を行う遺学的診断などがありますが、いずれも、専門的知識が欠かせません。疾病研究第一部はメディカル・ゲノムセンターと協力し、国内の7割以上の検体の筋病理診断を行っています。検査後の検体は、患者さんの同意を得た上で筋レポジトリー として蓄積され、研究に利用されています。既に21,000検体を越えており、世界最大規模のもののひとつです。
 また教育も重要な使命です。毎年NCNP主催で筋病理セミ ナーを開催し、700名以上の臨床医が受講しています。また、アジア諸国やエジプトなどの筋疾患診断の支援も行っています。タイのマヒドン大学シリラート病院とは、共同で国際筋病理セミナーを開催し、筋生検や凍結固定方法などの教育動画を共同で作成しました。動画は2018年1月に公開以来、107ヶ国からのアクセスがあり、国際的な医療の進展に貢献しています。


リファレンス

【リファレンス】

  1. (1) Uruha A, Nishikawa A, Tsuburaya RS, et al. Sarcoplasmic MxA expression: A valuable marker of dermatomyositis. Neurology (2017) 88(5):493-500. (2) Inoue M, Tanboon J, Hirakawa S, et al. Association of dermatomyositis sine dermatitis with anti-nuclear matrix protein 2 autoantibodies. JAMA Neurol. (2020) 77(7),872-877. (3) Tanboon J, Uruha A, Stenzel W, Nishino I. Where are we moving in the classification of idiopathic inflammatory myopathies? Curr Opin Neurol. (2020), 33(5), 590-603.
  2. 筋生検・検体固定・検体送付の手技解説ビデオ
    https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/video.html

研究部紹介

神経研究所 疾病研究第一部

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写真/疾病研究第一部 西野一三部長

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写真/疾病研究第一部のメンバー

【ホームページリンク】
神経研究所
https://www.ncnp.go.jp/neuroscience/

疾病研究第一部
https://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r1/index.html


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