てんかん原性腫瘍の遺伝子をMRIから予測

てんかん原性腫瘍の遺伝子をMRIから予測

脳神経外科 は、てんかんおよび不随意運動症に対する
検査・内科的治療および手術治療を行っています。
手術で切除された組織を活用し、
手術が必要になるような難治てんかんの原因となる
病変の遺伝子解析に取り組んでいます。

  1. TOP
  2. NCNP注目の取り組み
  3. てんかん原性腫瘍の遺伝子をMRIから予測

NCNP病院脳神経外科診療部

手術が必要となる
てんかんの原因

研究風景の写真
研究風景

 「てんかん」はひとつの病気の名前ではなく、「てんかん発作」を起こすさまざまな病気の総称です。てんかんの原因となる病気にはたくさんの種類があります。多くのてんかんは薬の治療で発作が無くなりますが、薬で治まらないてんかんもあります。てんかんが薬で治まらない場合は、手術治療が行われることがあります。手術が必要なてんかんの原因には「海馬硬化症」「大脳皮質形成異常」そして「脳腫瘍」の3つが多いことが知られています。
 脳神経外科診療部では、てんかんの手術の主要な原因のひとつである脳腫瘍の遺伝子解析を行っています。私たちは、当院で脳腫瘍によるてんかんで手術を受けた患者さんの手術検体を用いた遺伝子解析を行いました。その結果、脳腫瘍の原因となる遺伝子型を手術前のMRIから予測できることを世界で初めて見出しました。この研究成果は2020年12月にシアトルで行われたアメリカてんかん学会で発表し、表彰されました。

MRIから遺伝子型を予測し
治療に役立てる

てんかんの原因となる脳腫瘍の図
研究概要の図(てんかんの原因となる脳腫瘍の遺伝子タイプを調べ、約半数 でBRAF V600E変異、約1割でFGFR1変異を認め、遺伝子のタイプに特徴 的なMRIの画像分類を発見)

 脳腫瘍の遺伝子型を手術前のMRIから予測する方法は、「大脳皮質形成異常」にも応用することができます。私たちは mTOR経路と呼ばれるグループの遺伝子の変異に着目し、今後は大脳皮質形成異常も手術前のMRI検査を用いて遺伝子型を予測する方法を開発したいと考えています。MRIから遺伝子型を予測することは治療にも役立ちます。近年の分子生物学の発展により、特定の遺伝子変異に対する分子標的薬がたくさん開発されています。将来はMRI検査でてんかんの原因となる病変の遺伝子型を予測し、その遺伝子型に見合った分子標的薬を使用することで、手術をしなくてもてんかんが治まるような治療ができることを目指しています。
 遺伝子の型によってMRIの特徴が決まるという現象は、「DNAからRNAが作られ、RNAからタンパク質が作られ、タンパク質から生物が作られる」という法則に則っています。これはDNAの二重らせん構造を発見したクリック博士が50年前に提唱した分子生物学のセントラルドグマ(中心原理) です。50年前の研究が、最新の医療を支えています。


リファレンス

1.受賞報告2020年12月18日「脳神経外科の飯島圭哉医師が、米国 てんかん学会にてSuzanne and Peter Berry International Abstract Awardを受賞しました」
https://www.ncnp.go.jp/topics/2020/20201218aw.html.html
2. 飯島圭哉 岩崎真樹 てんかん原性腫瘍の分子遺伝学的配析
新分類 Medical Science Digest (2020) Vol46(2), 40-42

研究部紹介

2021-12-staff.png

写真右/脳神経外科診療部 飯島 圭哉 医師
写真左/MGC・ゲノム診療開発部 南 久美子 臨床検査技師

【ホームページリンク】
NCNP病院 脳神経外科診療部
https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sd/noushinkei.html


▼NCNP内連携組織リンク