チームワークで、治療効果を最大に

チームワークで、治療効果を最大に

NCNP病院では、小児神経科、脳神経内科、身体リハビリテーション部、整形外科、放射線診療部が協力しながら、
脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者さんの診療に当たっています。
各科の専門性を持ち寄って、治療効果を最大にすることを目指しています。

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病院 小児神経診療部 第二小児神経科本橋 裕子医長

新しい治療薬の開発

SMA患者の大腿のMRI。筋肉が委縮し、脂肪に置き換わっている
SMA患者の大腿のMRI。筋肉が委縮し、脂肪に置き換わっている

 人は運動をする際、筋肉に力を入れます。その時に必要な「運動に関わる神経」のうち、脊髄に存在している神経細胞が変化・消失することで、脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy; SMA)という病気になります。SMAの多くは、SMN1という遺伝子に変化が生じて、SMNというタンパク質が少なくなることが原因であると分かっています。SMAでは徐々に筋肉量と筋力が低下し、できていた動きができなくなったり、呼吸に関わる筋肉が影響を受けると、呼吸がしにくくなったりする病気です。治療が難しく、つい最近までは筋力を少しでも保つ訓練や、呼吸を補助する治療などが主にできることでした。しかし最近、治療の研究が大きく進み、SMAに対してSMNタンパク質を増やすような治療薬が開発され、患者さんに投薬されるようになりました。

チーム医療

SMA患者の脊柱の継時的変化
SMA患者の脊柱の継時的変化。脊柱が側方に曲がり、側弯の状態となっている。年齢を経るとともに、側弯の程度は進行することが多い

 NCNPでは、大勢のSMAの患者さんを診療しています。患者さんを診療する際には、「この患者さんにとって一番良い治療法はどのようなものだろうか?」ということを考え、まずは患者さんの運動機能、呼吸状態、学校や社会生活、日常生活動作、側弯や関節拘縮の程度を評価します。それらに基づき、小児神経科、脳神経内科、リハビリテーション科、整形外科が、それぞれの専門性を持って、意見を出し合いながら治療計画を立てています。しかし、SMA患者さんにどのようなリハビリテーションや治療を実施すると、より良い効果が得られるか、ということは実はよくわかっていません。そこでNCNP独自の取り組みとして、運動機能の正確な評価と同時に筋肉の状態をMRIやCTなどの画像検査で評価し、ダメージが大きい筋肉や少ない筋肉を特定しながら、患者さんの病像に即したオーダーメイドの治療計画を立てることを考えています。

運動機能を
さらに高める
ための取り組み

NCNPで治療中の患者の運動機能の変化
NCNPで治療中の患者の運動機能の変化。運動機能テストの得点は、高い方が運動機能が良い。実線は、治療効果が明瞭に見られている例で、点線は効果が明瞭ではない例を示している

 SMAはSMNタンパク質が減少することで発症する疾患です。現在、SMNを増加させる様々な新規治療薬の研究開発が急速に進んでいます。新規治療薬の投与で、理論上は患者さんの筋力は増大すると考えられます。しかし、NCNPの診療で実際に投与を行なって得られたデータを詳細に検討したところ、明確な効果が得られる方と、そうではない方がいました。これがなぜか、という問いに対する答えはまだ存在しません。私たちは仮説の一つとして、筋力が増大したが、その筋力をどのように使用したら良いのか分からず、運動機能の改善につなげられないケースが存在しているのでは、と考えました。
 この仮説に基づき、より効率的で治療効果を最大化することを目的とした、SMAの患者さんに対するリハビリテーションプログラムの開発が可能と考え、私たちは今、チーム医療で取り組んでいます。


リファレンス

1.小牧宏文.【神経筋疾患、新たな治療の時代へ】近年の進歩 新しい治療の時代. 小児科診療83巻1号p7-10. 診断と治療社. 2020.
2.清水裕子.脊髄性筋萎縮症. 小児筋疾患診療ハンドブック. p171-175. 診断と治療社.2009.

研究部紹介

筋疾患センターのメンバー

筋疾患センターのメンバー