NCNP注目の取り組み

NCNP注目の取り組み
  1. TOP
  2. NCNP注目の取り組み
  3. 研究と臨床のクロストークが生んだ免疫疾患治療の進展と実践

研究と臨床のクロストークが生んだ免疫疾患治療の進展と実践

NCNP病院
脳神経内科診療部・多発性硬化症(MS)センター

脳神経内科診療部は神経・筋疾患の診療と研究を担っています。多発性硬化症(MS)と視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)などの自己免疫を背景とする疾患に対して、創薬に向けての臨床研究に取り組み、先進的な免疫治療を実践しています。

進化する多発性硬化症治療

 神経免疫疾患とは、免疫の異常により自分の神経を攻撃してしまう病気の総称で、代表的なものに多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)があります。若年から中年に発症して長期的に生活の質に影響します。
 MSは中枢神経に炎症と脱髄(神経線維の保護膜の損失)を生じる自己免疫疾患です。近年は疾患修飾薬(DMT)の進歩により、再発を防ぎ進行を遅らせることが可能となり、治療戦略が大きく変化しました。
 NCNPでは現在約500人のMS患者を診療しており、画像診断や免疫学的解析に基づく精密医療を実践しています。特に当院で創薬された免疫調整薬「OCH」は、人に初めて投与する治験(first-in-human)の第Ⅰ相試験を経て第Ⅱ相試験を完了し、医薬品実用化に向けた重要な中間段階まで到達しました。既存のDMTが特定の免疫細胞や分子を抑制するのに対し、OCHは免疫全体のバランスを調整するNKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)を介して、炎症を抑制する方向に導くという新しい作用機序を持つ薬です。研究と臨床のクロストーク(双方向の連携)から生まれたこの薬は、新たな世代の治療薬として期待されています。
 

図1: 二次性進行型MS患者におけるOCH投与後のNEDA達成割合(A)とGM-CSF産生ヘルパーT細胞の推移(B)
図1: 二次性進行型MS患者におけるOCH投与後のNEDA達成割合(A)とGM-CSF産生ヘルパーT細胞の推移(B)

 


NMOSD治療の最前線

 NMOSDは、2004年にアクアポリン4(AQP4)抗体が発見され疾患概念が確立し、治療法も大きく進展しました。 NCNPではIL-6という情報伝達分子が病態の鍵であることを明らかにし、IL-6受容体阻害薬「トシリズマブ」の医師主導治験を実施しました。この成果は「サトラリズマブ」の開発につながり、NCNPの研究が国際的な新薬誕生に直結しました。サトラリズマブに加え、補体C5阻害薬「エクリズマブ」や「ラブリズマブ」、B細胞除去薬「イネビリズマブ」や「リツキシマブ」が導入され、高い再発抑制効果を示しています。従来はグルココルチコイドや免疫抑制剤に依存した再発を完全に防げない治療が中心でしたが、標的分子を絞った抗体医薬の登場により、再発による視力障害や歩行障害といった不可逆的後遺症を予防できる時代へと大きく転換しました。NCNPでは約100人のNMOSD患者を対象に、病態解明と臨床実践を統合した精密医療を推進しています。
 NCNPでは研究成果を新たな治療へと結実させ、精密医療の実践を進めてきました。今後も研究と診療のクロストークから紡がれる知見で病態解明を推進し、個別化治療、根治療法の実現を目指します。
 

図2: MS、NMOSDの治療
図2: MS、NMOSDの治療

 

リファレンス

1.プレスリリース2023年6月2日「多発性硬化症に対する経口糖脂質OCHの第二相医師主導治験の成果発表~難治性の二次性進行型に対する画期的治療の可能性~」  https://www.ncnp.go.jp/topics/2023/20230602p.html
2. 『多発性硬化症・視神経脊髄炎診療のすべて』診断と治療社(2025/1/17発行) 監修:山村隆 編集:岡本智子、佐藤和貴郎

診療部紹介

脳神経内科診療部
多発性硬化症(MS)センター


 

多発性硬化症センターのメンバー
免疫疾患治療チームのメンバー

▼NCNP内連携組織リンク

 

記事初出
「Annual Report 2024-2025」(2026年1月発行)
広報誌>Annual Report2024-2025
※職員の所属情報は2025年10月現在のものです。