睡眠中の恐怖記憶強化・消去過程

恐怖記憶の定着阻止や消去に
効果的な睡眠操作法とは?

 近年、睡眠が情動に及ぼす様々な影響が明らかになってきました。我々が幸せや喜び、悲しみや恐怖を感じるのは、情動と呼ばれる脳機能のおかげです。中でも、恐怖に関わる記憶は、危機に対処するために不可欠な機能である一方で、これが過剰に働くと、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や一部の不安症といった精神疾患を発病する原因となると考えられています。
 恐怖記憶は、出来事や知識に関わる記憶(宣言記憶)、動作や技術の記憶(手続き記憶)と同様に、睡眠中に定着が促されます。逆に、恐怖記憶の獲得後に意図的に睡眠を奪う(徹夜)と、その定着が妨げられることが、我々の研究を含む多くの研究で明らかにされています。
 我々は、夜間の睡眠や午睡(昼寝)を操作することで、恐怖記憶の過剰な定着を防ぎ、効果的に恐怖記憶の消去を促す生理学的な方法を探索しています。適切な操作法やその生理学的過程を明らかにし、精神疾患の新たな予防法や治療法に役立てることを目指しています。