睡眠時随伴症

どんな病気?

 睡眠時随伴症は、睡眠中に起こる異常な行動や体験を特徴とします。どの睡眠段階から生じるかにより分類されています。

ノンレム睡眠から生じる睡眠時随伴症

 睡眠中に突然叫び声を上げたり泣き出したりする夜驚症、寝床を出て歩き回り、時には走り出すこともある睡眠時遊行症が代表的です。物を調理し食べるといった動作を特徴とする睡眠関連摂食障害(SRED)もここに含まれます。また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬などの副作用としてノンレム睡眠から生じる覚醒障害が出現することもあります。

 これらの睡眠時随伴症では、周囲が覚醒させることは難しく、患者は実際に何が起こったかを思い出せず、夢見の体験は伴いません。こうした特徴から、これらはノンレム睡眠(特に深睡眠)から不完全に覚醒した状態(寝ぼけ)と考えられています。

 多くは小児期に始まり思春期早期に自然に治りますが、まれに成人期まで持続することがあります。治療の対象となることはまれですが、本人や周囲の人に危険が及ぶ場合には治療を必要とします。寝室の安全性を高め、睡眠時に施錠する等の対策を講じたうえで、必要に応じ薬物療法が行われます。

レム睡眠から生じる睡眠時随伴症

 レム睡眠から生じる睡眠時随伴症の中では、悪夢障害やレム睡眠行動障害がよく知られています。

悪夢障害

 悪夢はほぼ誰もが経験しますが、これが頻繁に生じることで、眠りを妨げ、日常生活に支障を来す場合には、悪夢障害の可能性が考えられます。悪夢障害は、悪夢の内容を鮮明に想起できる点で、夜驚症と異なります。悪夢障害は小児期によくみられ、多くは成長とともに自然におさまります。成人に見られる悪夢障害の多くは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病に合併して出現します。PTSDでは、悪夢の内容が外傷的出来事の再現となることも多く、しばしば著しい苦痛をもたらします。

レム睡眠行動障害

 レム睡眠行動障害は、睡眠中に突然、大声の寝言や奇声を発したり、暴力的な行動を特徴とします。時には、ベッドから転落したり隣で寝ている人を叩いたりして、本人や周囲の人が怪我を負うこともあります。声をかけると比較的容易に覚醒し、夢の内容を明晰に思い出すことができるのも特徴です。レム睡眠中は筋肉の緊張を低下させる神経調節が働くため、夢の中で行動しても、実際には身体は動きません。レム睡眠行動障害は、この筋肉の緊張を下げる神経調節システムが障害されることにより、夢の中での行動がそのまま寝言や体動として現れます。

 レム睡眠行動障害は、50歳以降の男性に多く、加齢に伴い増加します。現在もしくは将来のパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症といった神経疾患と関係すると考えられています。レム睡眠に影響する抗うつ薬が関係して起こる場合もあります。

 これらの症状を確認するとともに、レム睡眠中に筋緊張の低下が起こらないことをPSGで確認することで診断に至ります。寝室環境の安全性を高め、ベッドパートナーとの距離を保つ工夫をし、必要に応じて薬物療法が行われます。