第4染色体長腕末端(4q35)には、D4Z4と呼ばれる3.3 kbの配列が繰り返している部分があります。正常人では、D4Z4が10回以上繰り返しています。これを、繰り返し部分の外側にあるEcoRI認識部位で切断してサザンブロットを行うと、35-300 kbのバンドとして検出されます。大部分のFSHD患者さまでは、この繰り返し部分に欠失があり、繰り返し回数が減少しています。サザンブロット上では、28 kb以下のバンドとして認識されます。このD4Z4の繰り返しの減少が実際にどのようにして、FSHDの発症につながるのかは、まだ十分に解明されていませんが、上記のサザンブロットにより、FSHDである可能性を調べることができます。
参考:FSHD解析と診断D4Z4リピート回数 (サザンブロット) | メチル化 | 4qハプロタイプ | SMCHD1・DNMT3B・LRIF1 | 診断 |
1-6 | 解析なし | A*1 | 解析なし | FSHD1 |
B*2 | 解析なし | FSHDの可能性は低い | ||
7-10 | 低下なし | A | 解析なし | FSHD2の可能性は低いが、FSHD1の可能性は残る |
B*2 | 解析なし | FSHDの可能性は低い | ||
低下あり | A | 既報告変異 | FSHD2 | |
未報告variant | FSHD2の可能性あり (病的意義不明) | |||
no mutation | FSHD2ではない.またはSMCHD1変異・DNMT3B変異・LRIF1変異を技術的な理由等で検出できていない | |||
B*2 | 解析なし | FSHDの可能性は低い | ||
≧11 | 低下なし | 解析不可 | 解析なし | FSHDの可能性は低い |
低下あり | 解析不可 | 既報告変異 | FSHD2 | |
未報告variant | FSHD2の可能性は残る (病的意義不明) | |||
no mutation | FSHD2ではない.またはSMCHD1変異・DNMT3B変異・LRIF1変異を技術的な理由等で検出できていない |
* 解析方法は下記文献をご参照ください。
Hamanaka et al. Neuromuscul Disord. 2016;26:300-308.
van den Boogaard et al. Am J Hum Genet. 2016;98:1020-1029.
*1 2017年以前にお送りいただいた全検体、および、2018年にお送りいただいた検体の一部(18-0700以前)では、D4Z4リピートが1-6回の場合には4qハプロタイプの解析をせずにFSHD1と診断されております。しかし、D4Z4リピートが1-6回である場合でも4qBハプロタイプである例が稀に存在することが分かり、それ以降は(18-0701以降は)D4Z4リピートが1-6回の場合にも4qハプロタイプ解析を行っております。
*2 当方では、4qAプローブを用いたサザンブロットでハプロタイプがAでないことを確認しており、4qBであることは直接検討してはいません。
4qハプロタイプ解析等追加解析が必要な場合は、検体残量が十分にあるか、および、解析がされていないかを調べますので、E-Mail:にお問合せください。
また同意書に関しまして、2020年3月に原行の倫理指針に準拠した全く新しい同意書に改定されていることより、可能であれば新しい書式で再度同意書を取得して頂きますようお願いします。(過去解析依頼時の同意書所得元と追加解析依頼元が同じ場合は必須ではありませんが、ぜひご協力お願いします。異なる病院の場合は、同意書の取得が必要です。)
一般的に、FSHD例の筋組織は診断的な変化に乏しいため、筋生検を施行する場合は、他疾患の除外が主な目的になります。臨床的にFSHDを疑う例では、筋生検を前提とせず遺伝学的診断を受け付けています。
筋疾患診断における骨格筋画像の有用性/必要性は高まる一方です。とりわけ筋病理所見で疾患特異的な所見に乏しいFSHDの診断では、骨格筋画像検査による罹患筋分布および左右差の評価が極めて重要です。FSHDの遺伝学的診断を依頼される際には、全身の骨格筋画像 *(DICOM)データを併せてお送り頂きますようお願いします。
*全身の骨格筋画像: 全身のマルチスライスCT/MRIを上肢を下ろした肢位で撮像して下さい。疾病研究第一部では、ご希望があれば、研究の一環として上記のサザンブロットを行います。このサザンブロットでは、他の疾患における遺伝学的診断よりも長いDNA断片を扱いますので、通常とは異なるDNA抽出方法をとっています。そのため、検体の送付方法や送付先が他の遺伝学的診断とは異なります。
❷用意するもの
❸ご注意いただくこと
- 採血は原則として発送当日に行い、翌日配達午前中必着指定の宅配便または郵便をご利用下さい(採血から解析開始まで最長4日です)。病院間配達サービスはご利用にならないで下さい。
- 検体は月〜水曜日午前中に到着するようにお送り下さい。検体処理に連続3日を必要とするため、祝日のある週の受付曜日はイレギュラーになりますので、ご注意ください。
- ・祝日のない週 ― 月〜水曜日正午まで受付
- ・月曜日が祝日の週 ― 火〜水曜日正午まで受付
- ・火曜日が祝日の週 ― 水曜日午前中のみ受付
- ・水〜金曜日の何れかが祝日の週 ― その週は受け付けませんので、翌週(月〜水曜日午前中)到着でお送り下さい
- ・年末年始、ゴールデンウィーク ― 原則として受け付けません
- 診断サービスを受けるには、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会にて承認された当方所定の「同意文書」を用いて、患者さまの同意(インフォームド・コンセント)を得て頂くことが必要です。私たちは、患者さまの同意がなければ一切の検査や診断を行いません。実際にインフォームド・コンセントをお取り頂く際には、「医師用説明文書」をよく読んだ上で、「被験者用説明文書」を患者さまに手渡してご説明下さい。
同意文書はコピーを取り、カルテに一部保存しておいて頂くとともに、患者さまにもコピーをお渡し下さい。同意文書の原本は、検体・データシートとともに下記宛にお送り下さい。- 結果報告までに6~9カ月を要しています。
送り先・お問い合わせ
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
国立精神・神経医療研究センターMGC検体受付窓口「FSHD係」
Tel:042-346-1770
E-Mail:
関係書類のPDFファイルがダウンロードできます。