疾病研究第一部では、メディカルゲノムセンター(MGC) ゲノム診療開発部との協力で、神経・筋疾患の各種診断サービスを行っています。特に、当部では、筋病理診断と顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーを含む各種遺伝性筋疾患の遺伝学的解析を行っています。筋病理診断を受けるためには、筋病理検査用に凍結固定した検体を病歴用紙・同意文書と共にMGC検体受付窓口宛にお送り下さい。
検体到着から診断の報告までの日数の目安(検体が正しく固定されている場合)
3ヶ月半 | 筋病理診断報告書 |
6ケ月 | ウェスタン解析・遺伝学的解析の報告 |
- コルクの上に固定されていない検体については、1ケ月から2ケ月に一度、まとめて立て直してから染色を行います。この場合、報告は上記日数よりもさらに1~2ケ月遅れることになります。
- 年末・年始、大型連休を挟む場合にはさらに日数が掛かります。
- 治療法選択などの理由で、どうしても診断を急ぐ場合は、ご連絡頂ければ最大限対応致します。
*2024年1月現在、原則として全例に対して全染色を実施しています(検体不良などの理由により、一部実施できない場合もあります)
*都合により随時変更される可能性があります
筋生検は技術的には簡単で、合併症も殆どありません。しかし、採取した筋肉片は微細な構造変化を見るために使われますので、丁寧な採取が必要です。外科医・整形外科医が採取した場合でも、病理標本として不適切な検体がしばしば見られます。筋生検に際しては、下記の点にご留意下さい。
- 採取部位の決定には、事前に骨格筋画像(MRIやCT)を撮像し、軽度〜中程度に障害されている筋を選択して下さい(検体とともにDICOMデータをお送り頂けると幸いです)。
- 筋炎を疑う場合には、必ず事前に骨格筋MRIを実施、浮腫性変化がある部位から検体採取を行って下さい。
- 腓腹筋は病理診断が困難であることで有名な筋です。腓腹筋に限局した症状や所見がある場合を除き、原則として腓腹筋からの筋生検は避けて下さい。
- 筋内には局麻薬を浸潤させないで下さい。
- 採取時には、血管採取時のように検体を糸で縛らないで下さい。
- 採取部分に対しては、電気メスを使用しないで下さい。
- 詳しくは、「筋生検・固定手技解説ビデオ」(日本語版)を参考にしてください。
- 初めて筋生検や検体の固定をなさる場合には、必ず経験者の下で行ってください。もし、経験者がいらっしゃらない場合には、一度ご相談下さい。
- 凍結固定操作は、コルクの上にトラガカントゴムを用いて検体を立てた上で、液体窒素で冷やしたイソペンタンで急速凍結する必要があります。
- 腎組織などのように、検体をOCTコンパウンド(Tissue-Tek)に埋めて凍結させないでください。
- 一旦凍結させた検体は、溶けないように細心の注意を払って下さい。
- 凍結固定を病院の病理部任せにしていませんか? 一般病院では、筋生検の件数が少ないため、病理部での凍結固定の経験が乏しい場合がよくあります。主治医が責任を持って、固定を行ってください。
- 詳しくは、「筋生検・固定手技解説ビデオ」(日本語版)を参考にしてください。
- 初めて筋生検や検体の固定をなさる場合には、必ず経験者の下で行ってください。もし、経験者がいらっしゃらない場合には、一度ご相談下さい。
正しく固定された光顕観察用標本
生検筋は患者さまが痛い思いをして提供されたものであり、大切に扱う必要があることは言うまでもありません。私達にとって、輸送時の凍結サンプルの融解ほど悔やまれることはありません。以下の事項を参考にしていただき、くれぐれも輸送時の融解がないようにして下さい。
❷用意するもの
- 発泡スチロールの箱: 20 cm ×23 cm×30 cm、23 cm ×23 cm×23 cm程度 (KARUX KC-3, KC-5など)。
- ドライアイス:箱を隙間なく埋める程度に多く入れる(4kg程度)。決して、新聞紙などで隙間を埋めたり、ドライアイスを紙で包んだりしないでください。
- 容器:凍結検体を乾燥しないように密封できる容器に入れ、容器が直接ドライアイスに触れるようにする。
- 同意文書(2025年3月11日改訂) :必ず、当方所定の用紙で、患者さま(または親権者)から承諾を得ていただくことが必要です。
- 病歴用紙(2022年11月11日改訂)
- 骨格筋画像(DICOM)データ:筋疾患診断に有用ですので、可能な限り併せてお送り下さい。
❸ご注意いただくこと
- 電子顕微鏡用の検体は、固定液(通常グルタールアルデヒド)からバッファー(カコジレートバッファーなど)に移し、凍結を避け別便でお送り下さい。
- 当方への到着が金曜日・週末・祝日とその前日・年始年末とならないようにして下さい。
- 遠方の場合は航空貨物(日通航空など)をご利用下さい。
- 原則として、検査会社に検体の輸送を任せないで下さい。
- 検体の梱包と発送は、他のスタッフに任せることなく、必ず、依頼される先生ご自身が責任を持って行って下さい。
- 料金着払いは受け付けません。
- プライバシー保護のため患者情報はFAXでは送らないで下さい。
送り先・お問い合わせ
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
国立精神・神経医療研究センターMGC検体受付窓口「筋病理係」
Tel:042-346-1770
E-Mail:
※結果に関するお問い合わせは、当方検体番号をご記載ください
関係書類のPDFファイルがダウンロードできます。