遺伝性筋疾患の究極の確定診断は、原因遺伝子変異を同定することです。疾病研究第一部・MGCゲノム診療開発部では、遺伝学的な確定診断に至るようにすべく、各種の遺伝学的解析サービスを提供しています。①当方で筋病理診断が行われている例のみを対象として施行する遺伝学的解析と②筋病理診断を前提としないで施行する遺伝学的検査があります。
2022年1月から2024年12月の3年間にわたり、筋病理診断実施例全例で行っていた筋疾患既知原因遺伝子の変異スクリーニングパネル (HMパネル) *は、2024年12月末で終了しました。 2025年1月以降は筋病理診断や骨格筋画像で遺伝性筋疾患が疑われる症例に対してのみ行いますので、遺伝子パネル解析が必要な場合はこちらからご案内いたします。
* Hereditary Muscle Diseaseパネル (HMパネル)
2021年3月までに日本人患者2名以上に変異が同定された115遺伝子の全エクソン領域およびエクソン・イントロン境界領域の99.78%をカバーしています。
疾病研究第一部・MGCゲノム診療開発部では、国立精神・神経医療研究センターで筋病理診断サービスを提供した例を対象に、次世代シークエンサーによるターゲットリシークエンス法を用いた既知遺伝子変異スクリーニングを行っています。本診断サービスでは、2015年9月現在で知られていた遺伝性筋疾患の全161原因遺伝子を多少の重なりを持たせつつ、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー/先天性筋無力症候群、筋原線維性ミオパチー/縁取り空胞性ミオパチー、代謝性ミオパチーの4グループ(パネルと言います)に分けた既知遺伝子パネルの中から、筋病理所見に基づいて適切なパネルを選択して解析を行います(下記リスト参照)。ご希望の場合には、本ページ下部の検体の送り方をご参照ください。なお、この方法では、対象遺伝子の全エクソン領域およびエクソン近傍のイントロン領域のDNA配列を解析していますが、一部技術的に読めない部分があるためターゲット領域カバー率が100%になっていません。
パネル名 | 対象疾患 | 遺伝子 | ターゲット 遺伝子数 |
ターゲット領域 カバー率 |
PGM_MD | 筋ジストロフィー | AGRN, ALG13, ANO5, B3GALNT2, B3GNT1, CAPN3, CAV3, CHKB, COL12A1, COL6A1, COL6A2, COL6A3, DAG1, DES, DMD, DNAJB6, DOK7, DOLK, DPAGT1, DPM1, DPM2, DPM3, DYSF, EMD, FAT1, FHL1, FKRP, FKTN, FLNC, GFPT1, GMPPB, ISPD, ITGA7, KLHL9, LAMA2, LARGE, LMNA, MEGF10, MICU1, MYOT, PLEC, POMGNT1, POMGNT2, POMK, POMT1, POMT2, PTRF, SGCA, SGCB, SGCD, SGCG, SMCHD1, STIM1, SYNE1, SYNE2, TCAP, TMEM43, TMEM5, TNPO3, TRAPPC11, TRIM32 | 61 | 96.7% |
PGM_CMP | 先天性ミオパチー 先天性筋無力症候群 |
ACTA1, AGRN, ALG14, ALG2, BIN1, CCDC78, CFL2, CHAT, CHRNA1, CHRNB1, CHRND, CHRNE, CHRNG, CNTN1, COLQ, DHPR, DNM2, DOK7, DPAGT1, GFPT1, HSPG2, KBTBD13, KLHL40, LAMB2, LRP4, MEGF10, MTM1, MUSK, MYBPC3, MYH7, NEB, ORAI1, PLEC1, PTPLA, RAPSN, RYR1, SCN4A, SEPN1, STIM1, TNNT1, TPM2, TPM3 | 42 | 97.2% |
PGM_MFM | 筋原線維性ミオパチー 縁取り空胞性ミオパチー |
ACTA1, BAG3, CFL2, CRYAB, DES, DNAJB6, EPG5, FHL1, FLNC, GNE, KBTBD13, KLHL40, LAMP2, LDB3, MATR3, MEGF10, MYH2, MYH7, MYOT, NEB, ORAI1, PABPN1, PLEC, RBCK1, SEPN1, SIL1, STIM1, TCAP, TIA1, TNNT1, TPM2, TPM3, TRIM32, TTN, VCP, VMA21 | 36 | 97.8% |
PGM_MM | 代謝性ミオパチー | ABHD5, ACADL, ACADM, ACADS, ACADVL, AGL, ALDOA, CACNA1S, CLCN1, CPT1, CPT2, ENO3, ETFA, ETFB, ETFDH, GAA, GBE1, GYG1, GYS1, HADHA, HADHB, ISCU, KCNA1, KCNE3, KCNJ12, LDHA, LPIN1, MICU1, MTO1, PFKM, PGAM2, PGK1, PGM1, PHKA1, PNPLA2, PRKAG2, PYGM, SCN4A, SLC22A5, ALC25A20, TAZ | 41 | 96.6% |
参考文献: Nishikawa A, et al. J Med Genet. 2017 Feb;54(2):104-110
遺伝子型・表現型相関が十分確立した一部の遺伝性筋疾患では、筋病理診断を行っていなくても、遺伝学的解析サービスを提供します。現時点での対象疾患は、下記の通りです。当該疾患が臨床的に疑われる場合には、下記の検体の送り方をご参照の上、診断サービスをお申し込み下さい。
疾患名 | 原因遺伝子 | 方法 |
GNEミオパチー(DMRV) | GNE | エクソン領域のシークエンス 必要に応じ、 Copy Number Variation解析* を行います。 |
カルパイノパチー(LGMD2A, LGMDR1) | CAPN3 | エクソン領域のシークエンス |
ラミノパチー(LGMD1B, 常染色体性EDMD) | LMNA | エクソン領域のシークエンス |
眼咽頭筋ジストロフィー(OPMD) | PABPN1 | Alaコドン伸長評価 |
眼咽頭遠位型ミオパチー (OPDM) | LRP12,GIPC1,NOTCH2NLC | CGGリピート伸長評価 |
ミトコンドリア脳筋症(MELAS, MERRF, CPEO) *筋生検が出来ない場合のみご相談に応じます |
mtDNA解析 | |
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)
*詳しくは顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの遺伝学的診断のページをご参照下さい |
D4Z4リピート短縮評価 |
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)の遺伝学的診断は検体採取量や送り方が異なります。詳しくは、こちらのリンクをご覧ください。
AMED國土班での全ゲノム解析について、概要ならびに同意文書については、こちらのリンクをご覧ください。
- 筋病理診断に伴う悉皆的遺伝子変異スクリーニング(HMパネル解析)か、特定の遺伝子の解析か
特定の遺伝子の場合は、当該遺伝子名または疾患名をお知らせください。- 送付予定検体(血液、凍結筋など)
- 検体到着予定日
❷用意するもの
❸ご注意いただくこと
- 何の診断依頼かを明記して下さい(疾患名、遺伝子名など)。
- 凍結筋と同時に発送される場合、凍結を避けるため別便でお送り下さい。
- 診断サービスを受けるには、国立精神・神経医療研究センター倫理委員会にて承認された当方所定の「同意文書」を用いて、患者さまの同意(インフォームド・コンセント)を得て頂くことが必要です。私たちは、患者さまの同意がなければ一切の検査や診断を行いません。実際にインフォームド・コンセントをお取り頂く際には、「医師用説明文書」をよく読んだ上で、「被験者用説明文書」を患者さまに手渡してご説明下さい。 同意文書はコピーを取り、カルテに一部保存しておいて頂くとともに、患者さまにもコピーをお渡し下さい。同意文書の原本は、検体・データシートとともに下記宛にお送り下さい。
- 結果報告までに3~6カ月を要しています。
- 到着日は限定していませんが、できる限り月~木曜日に到着するようにして下さい。
送り先・お問い合わせ
〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1
国立精神・神経医療研究センターMGC検体受付窓口「○○○係」
(HMパネル係、FSHD係、OPDM係など該当する係名を記載して下さい)
Tel:042-346-1770
E-Mail:
関係書類のPDFファイルがダウンロードできます。