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国立精神・神経センター神経研究所
遺伝子疾患治療研究部
Department of Molecular Therapy


 部長 武田 伸一
遺伝子疾患治療研究部では、筋ジストロフィーの発症や病態の分子メカニズムの解明、及びそれに基づいた治療法の開発に取り組んでいます。筋ジストロフィーには様々なタイプがありますが、最も患者数の多いデュシェンヌ型はジストロフィン遺伝子の変異によって生じ、男児約3,500人に1人が発症する遺伝性の疾患です。2〜5歳頃から発症して筋力低下が徐々に進行し、多くは30歳以前で呼吸不全などで死亡します。しかし、残念ながら今のところ有効な治療法は見つかっていません。そこで、私たちは以下の3つの手法を用いて同疾患の治療研究を行っています。(図)


 
第一のアプローチは、AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターを用いた遺伝子治療です。
当研究部では、これまでに同ベクターに組み込むことができる短縮型の「マイクロジストロフィン」を開発し、ジストロフィンを欠損するmdxマウスの筋変性を抑えることに成功しました。臨床応用へ向けたさらなるステップとして、2001年より臨床所見がきわめて人に近い動物モデルである筋ジストロフィー犬を日本ではじめて中型実験動物施設に導入し、同モデルを用いた治療研究を行っています。


 
第二のアプローチは、幹細胞移植治療です。
成体の骨格筋や骨髄には、複数の細胞を作る幹細胞(Multipotent Stem Cell)が含まれています。これらの細胞のうち、骨格筋に効率よく分化するものを集めて移植することにより、血管系を介して全身の骨格筋の治療を行うことができる可能性があります。


 
第三のアプローチは、薬物治療です。
当研究部では、ジストロフィン類似タンパク質であるユートロフィンを高発現化させる新規の薬物のスクリーニングを行っています。そして、遺伝子治療・幹細胞移植・薬物治療などの従来の枠を乗り越え、分子治療と呼ばれる新たな概念の治療法の開発により、1日でも早く同疾患を克服することを目標としています。
 また、上記の治療研究に加え、筋ジストロフィーの複雑な病態の分子メカニズムを明らかにするために、ジストロフィン結合タンパク質(サルコグリカン、シントロフィン、神経型一酸化窒素合成酵素、アクアポリンー4)の機能解析なども行っています。

Last update 4/24/2009