IRUDの挑戦 ―未診断疾患をゼロに!―

IRUDの挑戦 ―未診断疾患をゼロに!―

未診断疾患イニシアチブInitiative on Rare and Undiagnosed Diseases (IRUD)では、
全国縦 断的・専門分野網羅的な体制を構築し、
未診断疾患の診断を確定し、原因解明・治療法開発を推進し ています。
NCNPはコーディネーティングセンターとしてIRUDの中心的役割を担っています。

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IRUDコーディネーティングセンター

未診断疾患イニシアチブ
IRUDとは

 医学が進歩した現代にあっても、様々な検査を行っても診断がつかない、いわゆる「未診断疾患」の患者さんが依然として数多くいらっしゃいます。未診断疾患イニシアチブ [Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases: IRUD (アイラッド) ]は、全国の未診断疾患の患者さんに対して、網羅的ゲノム解析という最先端の技術を駆使して、診断を確定し、原因を解明し、治療への道筋をつけることを目的として、2015年に日本医療研究開発機構(AMED) のもとで発足したAll Japanのプロジェクトです。
 IRUDは、地域連携の核として患者さんのエントリーから最終的な診断までを担当するIRUD拠点病院、専門的な見地からIRUD拠点病院の活動を支援するIRUD臨床専門分科会、網羅的ゲノム解析を行い原因を特定するIRUD解析セン ター、データを集積・共有し原因の解明に繋げるIRUDデー タセンターが中心的な役割を果たしています。それらを統括するIRUDコーディネーティングセンターが研究全体の管理運営をおこないます。また臨床試料を保管し利活用するIRUDリソースセンターが設置されています。NCNPは、IRUDコーディネーティングセンターと、IRUD拠点病院、そしてIRUDリソースセンターを兼任しています(図1)。IRUD をオーケストラに例えると、NCNPは指揮者と演奏者の両方を兼ねているといえます。

IRUD診断連携図

図1:IRUD診断連携図

6年間の成果
診断体制構築、
未診断疾患の解明

 2021年4月時点で、全国37拠点病院を中心とする469 病院からなる診断体制が整備され、21専門分野合計557名の医師らによる臨床専門分科会が活動しています。2020年3月時点で5359家系がIRUDにエントリーし、4205家系において解析が完了しました。そのうち1808家系で診断が確定し、診断率は43%でした(図2)。これは海外の同様のプロジェクトを凌ぐ成果です。診断確定により治療法が見つかった場合もあります。さらに35の新たな原因・疾患を発見しました。また未診断疾患に関わる多くの人材を育成しています。このように、IRUDは全国の未診断疾患の患者さんの診断・治療・原因解明に大きく貢献しています。

IRUDの診断実績

図2:IRUDの診断実績(2021年3月時点)

IRUDの展望:
未診断疾患の
克服を目指して

 未だに未診断疾患は多く、私たちはそれらの解明を推進し、治療法の開発に取り組んでいます。既に国内外の研究者との大規模な連携体制が確立しており、精力的に研究が行われ大きな成果が得られています。またIRUDは国の難病・ ゲノム医療政策の重要な柱に位置づけられており、さらなる発展が期待されています。難病・ゲノム医療を担う人材の育成により、日本中どこにいてもどんな疾患であっても診断・ 治療を行える体制をさらに強化していきます。未診断疾患を ゼロにするまで、IRUDの挑戦は続きます。


リファレンス

  1. Adachi T, Kawamura K, Furusawa Y, Nishizaki Y, Imanishi N, Umehara S, et al. Japan's initiative on rare and undiagnosed diseases (IRUD): towards an end to the diagnostic odyssey. Eur J Hum Genet (2017) 25(9), 1025–8.
  2. Adachi T, Imanishi N, Ogawa Y, Furusawa Y, Izumida Y, Izumi Y, et al. Survey on patients with undiagnosed diseases in Japan: potential patient numbers benefiting from Japan's initiative on rare and undiagnosed diseases (IRUD). Orphanet J Rare Dis. (2018) 13(1), 208.

プレスリリース2022年4月5日
『未診断疾患の解決に向けて「全国どこにいても・誰でも」診断できる体制が確立』
https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20220405p.html

研究部紹介

IRUDコーディネーティングセンター

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写真;左から 病院/情報管理・解析部 小居秀紀 部長、 病院/脳神経内科診療部 髙橋祐二部長、NCNP/理事長特任補佐 水澤英洋、 病院/脳神経内科診療部 伊達英俊

リンク:IRUD ホームページ
https://plaza.umin.ac.jp/irud/

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