難病の子どもたちに新しい治療薬を届ける

難病の子どもたちに新しい治療薬を届ける

病院 小児神経診療部では、進行性の難病であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象に
当センターで開発した治療薬、ビルトラルセンの臨床試験に関わってきました。
現在は診療の中で、ビルトラルセンの長期的な安全性、有効性の検証に取り組んでいます。

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病院 小児神経診療部小児神経診療部

新しい治療薬
ビルトラルセンとは

 デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy;DMD)は、全身の筋肉が萎縮し、進行性に筋力が弱くなる難病です。ジストロフィンという遺伝子の変化によりタンパク質ができないことが原因で起こり、今まではステロイドがDMDの進行を遅らせる唯一の薬でした。
 ビルトラルセンは、NCNPと製薬会社が共同で見出したDMDの治療薬で、ジストロフィン遺伝子のエクソン53番という部分をスキップさせる作用があります。DMDの約10%に相当する特定の遺伝子の変化をもつ患者さんに投与すると、短いジストロフィンタンパクができて症状の進行を抑えることが期待されています。NCNPでは、神経研究所と病院などが連携して、2013年6月からビルトラルセンの臨床試験(治験)に取り組んできました。その結果、ビルトラルセンは安全に使用でき、患者さんの筋肉でジストロフィンタンパクができる効果があり、運動機能が維持される傾向があることがわかりました。ビルトラルセンは、DMDの新しい治療薬として、日本では2020年3月に条件付きで承認され、同年5月に発売されました。

ビルトラルセンの作用 図解

ジストロフィン遺伝子のエクソン52番が欠失しているDMD患者さんでは、メッセンジャー RNAという段階で読み枠がずれる(アウトオブフレーム)が起こり、タンパク質ができません。ビルトラルセンはエクソン53番をスキップさせることで読み枠を修正し(インフレーム)、短いタンパク質をつくります

ビルトラルセンの
長期投与への取り組み

 ビルトラルセンの治験は、少人数の患者さんを対象とした短期間の検証でした。今後はより多くの患者さんがビルトラルセンの治療を受ける可能性があり、長期的な安全性、有効性を調べていく必要があります。
 NCNP病院では、ビルトラルセンの治療を受けている患者さんを対象に、さまざまな評価を行っています。血液・尿・心臓・肺・腎臓の検査、筋肉量を調べる画像検査、床からの立ち上がりや10m走る時間を測定するテスト、腕や手の動きを点数付けする運動機能の評価などを定期的に実施しています。現在までの検証では、治療開始後に血中クレアチニンキナーゼ(CK)値が低下傾向になる患者さんが多く、ビルトラルセンによる症状改善効果である可能性を考えています。
 また、ほかにも新しい治療薬が出てきた時のために、ステロイド、リハビリテーションなどの標準的な治療を積み重ね、定期的に身体の状態や運動機能に関する情報を集めています。新しい治療に備えることはとても重要です。NCNPでは、 DMD患者さんとご家族と一緒に、多部門が連携して、今後も新しい治療法の検証を続けていきます。

グラフ:治療前からの血中クレアチニンキナーゼ値の変化

NCNPでビルトラルセン治療を行っているDMD患者さんでは、治療開始後にCK値が低下傾向を示しています


リファレンス

1.Komaki H, Takeshima Y, Matsumura T, Ozasa S, Funato M, Takeshita E, Iwata Y, Yajima H, Egawa Y, Toramoto T, Tajima M, Takeda S. Viltolarsen in Japanese Duchenne muscular dystrophy patients: A phase 1/2 study. Ann Clin Transl Neurol. (2020) 7, 2393-2408.
2.プレスリリース2020年3月27日「デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-065/NCNP-01、ビルトラルセン)の製造販売承認について」
https://www.ncnp.go.jp/topics/2020/20200327.html

研究部紹介

病院 小児神経診療部

NCNP病院 小児神経診療部ホームページ
https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/pediatric-medical.html

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