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支援が届く地域づくりへ 多職種による自治体アウトリーチの実践

精神保健研究所
地域精神保健・法制度研究部

地域精神保健・法制度研究部 は、「精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らせる社会」を目標として支援技法やシステムの開発、その効果を検証する研究をしています。また、その研究成果を社会に還元していけるように取り組んでいます。

「待つ」ではなく「届ける」支援

 どこの地域にも、ひきこもりや不登校、必要な治療を受けられていないなど、こころの不調や問題を抱える人がいます。そのような人たちが安定した生活を続けていくためには何らかの支援が必要なのですが、自ら助けを求めることができずに、支援が届いていないケースが多くあります。
 アウトリーチ支援とは、支援が必要な人々に対して支援者が「受け身で待つ」のではなく、「出向く」「手を伸ばす」「届ける」という方法の支援です。
 埼玉県所沢市では2015年から、「精神障害の当事者やその家族が住み慣れた地域で安心して生活していけること」を目的とした「所沢市精神障害者アウトリーチ支援事業」を展開しています。自治体が施策として行うアウトリーチ支援の取り組みは、全国でも先駆的なものです。
 私たちの研究部は2018年から所沢市の委託を受けて「医療・保健・福祉」の専門家である看護師、精神保健福祉士、作業療法士、公認心理師、精神科医師による多職種チームにより、サービスを使えない人に直接支援を提供したり、必要なサービスに徐々につなげていくなど、地域で安心して生活していくためのサポートとなる「包括的なケースマネジメント」を実践しています。
 
図1
図1: 自治体型のアウトリーチ支援が多職種による包括的支援を提供することは、
社会的生活機能の改善や必要な支援の充足につながることが示された。

地域精神保健を担うシステムの探索

 自治体におけるアウトリーチ支援はまだ発展段階です。私たちの研究部では、「支援を求めているのはどのような人か?」「どのような支援を求めているのか?」「効果をどのように検証していくのか?」ということについて、地域の中で活動するアウトリーチ支援チームと協力して調査を行い、その成果を国内外の学会や学術誌で発表しています。
 調査・研究を進めるなかで、症状や機能を評価する医学的指標ばかりではなく、症状にかかわらず地域で安心して支援を受けることができているか? ということを評価する自治体独自の指標が必要であることが明らかになってきました。そこで現在は、全国にある自治体アウトリーチ支援チームと協力し、評価指標の開発に取り組んでいます。また、これまでに実践してきた支援システムや支援方法の普及活動にも力を入れています。これらの成果は、世界保健機関(WHO)による視察や、自治体・医療機関からの研修、見学の受け入れを通じて広く共有されています。
 さらに地域における支援の質を上げるために、ピアサポーターの育成や、ピアサポーターと共に訪問支援を行う活動なども行っています。これらの取り組みを通じて、地域でのメンタルヘルスケアの向上に貢献し、多くの人に支援の手が届く地域システムの構築を目指しています。
 
図2
図2: 訪問先に向かう

リファレンス


1.Iwanaga M, Yamaguchi S, Sato S, Nakanishi K, Nishiuchi E,Shimodaira M, So Y, Usui K, Fujii C. Comparison of the 12-item and 36-item versions of the World Health Organization Disability Assessment Schedule (WHODAS) 2.0 using longitudinal data from community mental health outreach service users. Neuropsychopharmacology Reports. (2024)44(2),457-463.
2.中西清晃:所沢市精神障害者アウトリーチ支援事業.精神障害とリハビリテーション(2022)26(2),208-212.

研究部紹介

地域精神保健・法制度研究部

地域精神保健・法制度研究部 中西 清晃 チームリーダー
地域精神保健・法制度研究部 中西 清晃 チームリーダー
アウトリーチ支援チームと研究部のミーティング


関連リンク
精神保健研究所
 
記事初出
「Annual Report 2023-2024」(2024年12月発行)
広報誌>Annual Report2023-2024