私って不眠症?~不眠症と間違えられやすい睡眠障害~

私って不眠症?~不眠症と間違えられやすい睡眠障害~

  1. TOP
  2. NCNP病院について
  3. 眠りと目覚めのコラム
  4. 私って不眠症?~不眠症と間違えられやすい睡眠障害~

はじめに

2021/10/1

文責:大槻 怜

 「夜眠れない」と不眠に悩まれ、当院の睡眠障害外来に来院される方の中には「睡眠薬を飲んでいるけれど眠れない」と困っておられる方もいます。実は、こういった難治の不眠の悩みを抱えている方の中には、不眠症以外の睡眠障害が隠れている場合があります。
 今回のコラムでは、不眠症以外の代表的な睡眠障害について話していきたいと思います。

このコラムの内容

このコラムの内容

1.不眠症とは

2.不眠症以外の代表的な睡眠障害について
 1)閉塞性睡眠時無呼吸(睡眠時無呼吸症候群)
 2)レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)
 3)周期性四肢運動障害
 4)概日リズム睡眠・覚醒障害

3.おわりに

1.不眠症とは

 不眠症状には下記の3つがあります(コラム【不眠で困ったときには】参照)。

①寝つくのに時間がかかる(入眠困難)

②いちど眠りについても目が覚めてしまい、再び寝つくのに苦労する(中途覚醒)

③予定している時間よりも早くに目覚めてしまう(早朝覚醒)

 ①~③の不眠症状が週3回以上見られ、日中の倦怠感や眠気などの日中の機能障害が持続するものを不眠症と呼びます。①~③の不眠症状は、不眠症以外の睡眠障害にもみられることがあるため、これらの症状が他の睡眠障害で生じていないと確認することが不眠症の診断に必要となります。不眠症と不眠症以外の睡眠障害で治療法が異なるため、本コラムでは他の睡眠障害を疑う症状について話していきたいと思います。


2.不眠症以外の代表的な睡眠障害について

1)閉塞性睡眠時無呼吸(睡眠時無呼吸症候群)

 「朝起きたときにぐっすり眠ったという満足感が感じられない」「日中に何度も居眠りをしてしまう」など、睡眠休養感の欠如や日中の眠気などに悩まれて来院される方の中には「いびきがひどいと家族から文句を言われる」「寝ているときに息が止まるらしい」など【いびき、無呼吸】を指摘されていることがあります。
 以前のコラム【睡眠時無呼吸診療について】で詳しく説明されていますが、閉塞性睡眠時無呼吸は就寝中に呼吸が止まったり(無呼吸)、呼吸が浅くなったり(低呼吸)するため、中途覚醒や日中の眠気、倦怠感などが生じる睡眠障害です。
 閉塞性睡眠時無呼吸が疑われる場合には、睡眠検査による確認が必要です。無呼吸の重症度に応じて、減量などの生活指導に加え、口腔内補助装置や持続陽圧呼吸(CPAP)療法での治療を検討していきます。

2)レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

 レストレスレッグス症候群はむずむず脚症候群とも呼ばれ、むずつきや不快感などと表現される下肢の不快感(異常感覚)により強い入眠困難が生じる睡眠障害です。
 この下肢不快感には、

①下肢不快感のため足を動かしたいという衝動にかられる

②安静にしていると悪化する

③四肢を動かすと症状が軽減する

④症状が夕方~夜間に悪化する

の4つの特徴があります。
 はっきりとした原因がわからない場合も多いのですが 、鉄欠乏性貧血、妊娠、透析、脳神経疾患、薬の副作用、カフェインやアルコール摂取、喫煙などの誘因があることがあります。睡眠習慣の見直しやカフェイン・アルコール・喫煙を控えるなどの非薬物療法に加え、患者さん毎の状況も考慮しながら、鉄剤、ドパミン製剤、抗てんかん薬などの薬物療法を組み合わせ治療します 。

3)周期性四肢運動障害

 周期性四肢運動障害は、睡眠中に頻回な四肢の不随意運動が生じることで睡眠休養感が得にくくなり、不随意運動が多い場合は頻繫な中途覚醒に繋がる睡眠障害です。本人は自覚していないことが多く、ベッドパートナーや同居家族による確認が有用です。2)のレストレスレッグス症候群の類縁疾患と考えられており、レストレスレッグス症候群と周期性四肢運動障害は合併する事があります。この2つの疾患が合併するとレストレスレッグス症候群による入眠困難と周期性四肢運動障害による睡眠休養感の欠如が併存するようになるため、不眠症と間違えられやすいという特徴があります。治療はレストレスレッグス症候群と同様ですが、レストレスレッグス症候群と異なり、確定診断には睡眠検査が必要です。

4)概日リズム睡眠・覚醒障害

 望まれる睡眠時間帯に対して体内時計がずれているために、種々の不眠症状が生じる睡眠障害です。睡眠・覚醒リズムのパターンにより、睡眠・覚醒相後退障害、睡眠・覚醒相前進障害、不規則睡眠・覚醒リズム障害、非24時間型睡眠・覚醒リズム障害、時差障害、交代勤務障害に分類されます。診断のために睡眠日誌(詳しくは【睡眠日誌について】)や活動量計による睡眠スケジュールの確認が有用です。

概日リズム睡眠・覚醒障害には様々な病型があり、それぞれ感じる不眠症状が違います。

 概日リズム睡眠・覚醒障害は一般的な睡眠薬に反応しにくいことが知られています。そのため、睡眠・覚醒リズムの乱れに繋がりやすい生活習慣の見直し、内因性概日リズムの制御に関わるメラトニンを調節する薬剤、概日リズム位相の前進効果を有する高照度光(日光)の利用などを用いた治療を行います。当院では入院治療も行っています。(コラム【睡眠・覚醒相後退障害の治療プログラム】参照)


3.おわりに

 今回のコラムでは、不眠症と間違われやすい代表的な睡眠障害についてお話ししました。他にも様々な睡眠障害があるため、不眠症状以外でお悩みの方も「これって睡眠障害なのかな」と感じたら、当院の睡眠障害外来へご相談ください。

 また、当睡眠障害センターでは、例年市民公開講座を行っておりますので、ご興味を持っていただけましたら是非ご参加いただけたらと思います。

*令和2年度 市民公開講座の内容の一部を下記コラムでも紹介しておりますのでご覧ください。

【眠り、リズムと健康①】

【眠り、リズムと健康②】

【眠り、リズムと健康③】

【NCNP市民公開講座Webセミナー「新しい生活様式と睡眠・リズム」視聴者アンケート調査結果】