NCNP 新型コロナ対応C-チームの特徴

新型コロナウイルス感染症 (以下コロナ) が世界規模で発生し、2020年6月からNCNPでもコロナ患者さんの診療が始まりました。当センターのコロナ診療対応チーム「C-チー ム」は、ウイルスについての不安が最も大きかった流行初期に自ら希望したメンバーで結成され、モチベーションの高い前向きなチームとなりました。
情報共有のため、多職種によるカンファレンスを毎日行いました。医師だけではなく、看護職、精神保健福祉士、薬剤師、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)、事務職など、職種や肩書、キャリアを越えた話し合いが活発に行われ、新しい取り組みも生まれました。
例えば、NCNPは全国でもいち早くネーザルハイフロー(特殊な酸素療法) を導入しましたが、これは臨床工学技士 (ME) の力強い助言により実現したものです。薬剤師や微生物検査室との意見交換も、治療方針に大きく貢献しました。
また、デルタ株の流行期には重症化率が高く、スタッフの心のケアが必要になる場合には、精神科リエゾン看護師や臨床心理士がサポートし支えました。
コロナの治療は、感染拡大を防ぐためにレッドゾーンという限られたエリア内で全てを行わなければなりません。当院では総合内科・脳神経内科・脳神経小児科・精神科の医師が1日に複数回レッドゾーンに入室して患者さんと直接会話をする診察を行い、看護師との円滑な情報共有につとめました。放射線診療部はポータブル撮影機器を用いてレッドゾーン内でのX線撮影にも対応しました。手術部の協力により、レッドゾーン内での気管切開術も麻酔科・手術部の協力により1例ありました。
C-チームの知識と経験を、その先へ

NCNPは、新型コロナ感染症と精神疾患を併せ持つ患者さんの受け入れを行いました。2類感染症対応という特殊な入院環境、目まぐるしく変化する身体状態とコロナの治療、家族とも会えないコロナ禍の特殊な入院環境など、患者さんの精神状態に悪影響を及ぼす条件が多くありました。
看護師は、個人防護服の着用という環境的負担の大きい中で汗だくになりながらも、時間の許す限り患者さんの話を聞き、ゆっくりと患者さんのペースでの食事介助や、歩行訓練をするなどの様々なケアを行いました。ICU-AW(重症患者さんの筋力低下)が頻回に起こると、PT・OTがリハビリテー ションを行い、患者さんたちが、精神的にも身体的にも入院時より元気になって退院できるよう努めました。そして、精神保健福祉士スタッフは入院時の情報収集から退院調整までを行い、コロナ病棟を下支えしました。
コロナ対応の経験は、組織にもスタッフにも貴重な財産となりました。同時に、精神疾患の患者さんを受け入れにくい社会的な課題にも直面しました。わが国の医療の向上に向け、NCNPで得た知見を内外に発信する事が次のステップです。
リファレンス
- 第119回 日本精神神経学会学術総会 (2023年6月23日)「当院における精神・神経疾患患者に対する新型コロナウイルス感染症診療の変遷」稲川拓磨、佐竹直子、岡野宏紀、榎田嵩子、宇佐美貴士、鵜沼敦、齊藤勇二、高野和夫、宇都宮智、有賀元、野田隆政
- 2 取材協力:『Shrink~精神科医ヨワイ~9』『新型コロナウイルスと心』編著・七海仁/月子 (2022-11-17)集英社刊
部門紹介 COVID-19診療対応チーム
COVID-19診療対応チームのメンバー
▼NCNP内連携組織リンク
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NCNP病院 脳神経内科診療部
NCNP病院 脳神経小児科診療部
NCNP病院 身体リハビリテーション部
NCNP病院 看護部
NCNP病院 薬剤部
NCNP病院 臨床検査部
NCNP病院 放射線診療部
NCNP病院 麻酔科部
NCNP病院 手術・中央材料部
NCNP病院 医療連携福祉相談部
記事初出
「Annual Report 2022-2023」(2023年12月発行)
>広報誌>Annual Report2022-2023